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【スプリングS】接戦、激戦ムードな今春の牡馬クラシック

  • 2022年03月22日(火) 18時00分

予想以上に高まった皐月賞に出走可能なボーダーライン


重賞レース回顧

ビーアストニッシドが初重賞制覇(C)netkeiba.com、撮影:小金井邦祥


 まだ、3月26日の「毎日杯」が最終ステップとして残っているが、「皐月賞」へのステップレースがほぼ終了した。「弥生賞、スプリングS、若葉S」の3つのトライアルで優先出走権を得た馬と、今週の「毎日杯」で出走可能な獲得賞金に達しそうな馬を加えると、複数の重賞を制してクラシック路線を目ざす馬のいない今年、逆に、皐月賞に出走可能なボーダーラインは予想以上に高まることになった。

 新馬→東スポ杯2歳Sを制し、早くからクラシック候補ランキングの最上位だったイクイノックス(父キタサンブラック)の収得賞金は2300万円。もちろん心配のしすぎで、イクイノックスが出走不可能となる危険はない(いざとなればオーナーサイドの調整だってありえる)のだが、近年では最大のポイントレースになる東スポ杯2歳Sの勝ち馬が、ボーダー賞金に近いことになった。実際、出走可能順位10数番目に後退している。それだけ、今春の牡馬クラシックロードは接戦、激戦ムードということだろう。

 スプリングSをハナ差で制したのは、ずっと重賞路線を歩んで3戦連続して負けてきたビーアストニッシドだった。自身、初の重賞制覇であると同時に、父アメリカンペイトリオット(その父War Front)にとっても初のJRA重賞勝ち産駒となった。

 パドック終盤からイラついた気性を前面に出し、馬場に向かう途中では生垣を蹴飛ばして走りだす始末。そのままの状態の返し馬では、焦った岩田康誠騎手が大きな怒声を発してたしなめる異常なムードだった。

 ところが、レースが始まるとカッカするシーンはなく、前半1000m通過60秒8の楽な平均ペースで単騎の逃げ。イレ込みなど嘘のようにマイペースに持ち込んだビーアストニッシドは精神的にしたたかだった。無理のないペースで主導権を握ったとはいえ、前回(1000m通過61秒1)とほとんど同じようなペースでの1分48秒4は、同じ1800mの共同通信杯の1分48秒3を、コースと馬場状態を考えると確実に上回っている。スプリングSでは最近10年の5位タイの侮り難い時計だった。当然、皐月賞に向かうことになるが、岩田康誠騎手には先約があるとされ、乗り替わる予定。

 2着アライバル(父ハービンジャー)は、最初から勝ち馬をマークする2番手。非常に恵まれた展開で、直線では簡単に交わせそうに映ったが、ゴールの瞬間はハナ差まで追いすがったものの、マークして追う立場を考えると案外な中身だった。

 レース後、栗田調教師は「脚元の関係もあって無理できないので、おそらく皐月賞には向かわない」としている。

 中団のインで流れに乗り、最後の直線も絶妙なコース取りで3着に突っ込んだのはサトノヘリオス(父エピファネイア)。前走のホープフルSでは間隔の詰まった日程が応えたのか、小さなフットワークになっていたが、今回は本来のシャープな脚さばきで追って鋭く伸びた。数字より小ぶりに映る馬体だが、ムダな部分がない体型がそう見せるのだろう。良馬場ならもっと切れるはずだ。

 1番人気のアサヒ(父カレンブラックヒル)は、勝ったビーアストニッシドとは逆にパドックでは落ち着きすぎるほどのんびり歩いていた。ところが、スタート直前になるとゲートの中で激しく首を上げ下げして、暴れそうになる寸前。当然のように出遅れてしまった。最後方追走から向正面で少し順位を上げ、3コーナーからまくって出たが、結果は形作りに近く、直線中ほどで失速してしまった。収得賞金1150万円では複数の回避馬が出ないと皐月賞出走は難しい。

 3番人気のソリタリオ(父モーリス)は、マイラー体型に近いが、気配は良かった。ただ、初の右回りを気にしたのかピッチを上げたい3コーナーからもたつき、最後方近くに下がってしまった。バテたわけではなくレース上がりを上回る35秒2(一旦は下がったロスもある)で上がっているが、結果は、見せ場のない完敗だった。

 4番人気のアルナシーム(父モーリス)は、426キロの小型馬とは思えないのびのび見せる好馬体だったが、初の中山コースと稍重発表の芝コンディションが合わなかったのか、前走で見せた切れ味は不発。パンチ力もう一歩なので、時計の速い軽い芝向きか。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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