ディープインパクト以来の快挙
レコードの2分09秒7で完勝したタイトルホルダー(C)netkeiba.com
4歳牡馬タイトルホルダー(父ドゥラメンテ)の驚くべき成長力と、総合力が爆発した前半戦最後のビッグレースだった。
「天皇賞(春)→宝塚記念」の同一年制覇は、2006年のディープインパクト以来のこと。また4歳になって無敗の3連勝での宝塚記念勝利も、2006年のディープインパクト以来の快挙だった。
これでGIは、菊花賞3000mを5馬身差圧勝、天皇賞(春)3200mは7馬身差で独走。そして中距離区分に入る宝塚記念2200mは、コース(及びレース)レコードの2分09秒7で完勝。「勝ったら、行こう」とオーナーが約束していた凱旋門賞に、横山和生騎手で挑戦することが確実になった。
日本ダービーをレコードで制して、先に凱旋門賞挑戦を明らかにしている3歳ドウデュース(父ハーツクライ)には、父母両系に凱旋門賞に関係する名馬が散りばめられているが、タイトルホルダーの父ドゥラメンテは、キングカメハメハ、サンデーサイレンスを筆頭に、トニービン、ノーザンテースト、ガーサント…。日本のチャンピオンサイアーの血の結晶であり、エアグルーヴ一族の牝祖になる輸入牝馬パロクサイドの父は英ダービー馬Never Say Dieネヴァーセイダイ。
タイトルホルダーの母の父Motivatorモティヴェイターも英ダービー馬なら、その父Montjeuモンジューは、エルコンドルパサーを0秒1だけ封じた1999年の凱旋門賞馬。祖母の父Shirley Heightシャーリーハイツも英ダービー馬。その父Mill Reefミルリーフは英ダービー馬。かつ、凱旋門賞馬。欧州向きのタフなスタミナを秘めるファミリーであり、それで2200mをレコードで押し切るスピードを示したのだから秋の期待は高まる。かつて、1996-1998年の凱旋門賞を3連勝したO.ペリエ騎手は、日本遠征でスピード競馬に開眼し、スローの多い凱旋門賞で自在の先行力を生かす戦法を駆使した一面があった。
前半1000mを57秒6で先導したパンサラッサ(父ロードカナロア)に、そのハイペースを強いたのは、どのライバルより高速ダッシュをみせたタイトルホルダーだった。パンサラッサは「10秒4」の猛ラップが刻まれた2ハロン目に、押して先頭に立たざるをえなかった。タイトルホルダーの、豊富なスタミナ兼備のスピード能力は、凱旋門賞で大きな強みとなるだろう。前半1000m通過は離れた2番手でも推定58秒5前後だった。このペースで行って2200mをレコードで押し切ったタイトルホルダーは、天皇賞(春)よりはるかにすごかった。
同じように好スタートのヒシイグアス(父ハーツクライ)は、ハイペースを避けるように一旦6-7番手に下げる巧みな騎乗。6歳馬ながら再三の充電期間を取りつつまだ15戦【6-5-0-4】。昨年末の香港カップ2000mでは、ラヴズオンリーユーG1 4勝とわずか0秒02差の2着。G1タイトル目前となった。
3着に突っ込んだ5歳牝馬デアリングタクト(父エピファネイア)も実に見事な内容だった。5戦無敗で牝馬三冠を制した名牝は、そのあと【0-1-3-1】。勝ち星こそないが、1年にも及ぶ脚部不安ブランクを克服し、GI路線に復活してみせた。
秋の牝馬路線では文句なしの主役になる。
4着ディープボンド(父キズナ)は詰めの甘さを克服しようと、今回はきわめて積極的だった。最後に差されて4着だが、これはデアリングタクトを誉めるべきで、「57秒6-(12秒1)-60秒0」=2分09秒7の勝ち時計はあまりに速すぎた。自身の2分10秒3は、従来のレースレコード2分10秒1(2011年アーネストリー)と差はない。いつもの馬場コンディションなら勝ち負けだった。
14番人気で快走したマイネルファンロン(父ステイゴールド)と並んで6位入線が1番人気のエフフォーリア(父エピファネイア)。3コーナーあたりからハイペース追走が苦しくなり、大阪杯と同じように大敗かと思えたが、もっとも苦しくなった最後に根性で伸びた(上がり36秒2は勝ち馬と0秒1差)。完敗は事実だが、立ち直りの気配はみせた。3歳時に皐月賞を制し、日本ダービー0秒0差。天皇賞(秋)1着、有馬記念1着。早熟説もささやかれたりするが、そうではなく激走の連続で想像以上に心身に反動が出ていたのだろう。まだ完調には不足でも、秋に完全復活できる可能性は示した。