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【弥生賞】急成長したコスモキュランダと名手のファインプレー

  • 2024年03月04日(月) 18時00分

関係した馬の出走レースを手がかりに推理することが重要


重賞レース回顧

弥生賞を制したコスモキュランダとM.デムーロ騎手(撮影:下野雄規)


 6番人気の新星コスモキュランダ(父アルアインは2017年の皐月賞馬)が快走して1分59秒8。1984年のグレード制導入と時を同じくして2000mになった弥生賞(その最初の勝ち馬はシンボリルドルフ)のレースレコードだった。

 今年は各地の芝コンディションが良く、予測された勝ちタイムではあったが、午前中までは稍重だった芝コンディションを気にする馬もいて、決して高速馬場ではなかった。急成長したコスモキュランダの勝利を素直に評価したい。

 というのも、2着に押し上げた3番人気のシンエンペラー(父Siyouniシユーニ)は、京都2歳S・2000mを1分59秒8で制し、前走のホープフルS2000mは2分00秒3で小差の2着。そして今回は弥生賞2000mを2分00秒0で2着して[2-2-0-0]。まだ能力比較が難しい中にあって、どうやら格好の「能力基準馬」となってくれたからだ。

 これからまだ、3月16日の「若葉S2000m(阪神)」、3月17日の「スプリングS1800m(中山)」、3月23日の「毎日杯1800m(阪神)」がある。さらに候補となる新星が誕生する可能性はあるが、現時点では、ホープフルSでシンエンペラーを完封した牝馬レガレイラ(皐月賞予定)、共同通信杯を1-2着のジャスティンミラノ、ジャンタルマンタル、接戦のきさらぎ賞を切り抜けたビザンチンドリーム、さらには休養中のゴンバデカーブースなど、ランキング上位とされる候補を、シンエンペラーや、同馬に関係した馬の出走レースを手がかりに推理することが重要になった。

 勝ったコスモキュランダは、今回が7戦目のキャリアと、一戦ごとの上昇がモノをいった形になったが、M.デムーロ騎手の好騎乗も大きい。伏兵を3着に押し上げた芝の6R、控えすぎて伸びきれなかった芝の9Rの騎乗を大きなヒントに、この日の芝は慎重に控えてもそうは切れ味を発揮できないコンディションであることを理解していた。

 伏兵シリウスコルト(父マクフィ)が先手を奪った前後半「60秒4-59秒4(レース上がり35秒1)」の流れは、決して3コーナー手前からまくり気味にスパートしてもいいほどスローの展開ではない。コスモキュランダの状態の良さと、馬場コンディションを読んだM.デムーロ騎手の久しぶりに見せた強気なファインプレーだった。

 2着シンエンペラーの戦法はホープフルS2着時とは、川田騎手なので少し違って、4コーナー手前まで無理に動いていない。今回は前回より0秒9も速い上がり34秒8を記録して一歩前進はあったが、走破タイムは、似たようなペースで勝ち時計が2分00秒2だったホープフルSと、この馬はほとんど同じ2分00秒0。

 賞金は足りているので、本番に向けての周到なステップの印象もなくはなかったが、この時期に求められる急成長があったかについては、見方が分かれるだろう。

 1番人気のトロヴァトーレ(父レイデオロ)は、終始シンエンペラーと同じ位置を追走。前半に口を割って折り合いを欠くロスがあり、走りにくい下を気にしたのかスムーズなレースができなかった。条件賞金900万円なので、皐月賞挑戦には3着以内が絶対の条件だったのだが‥‥。スプリングS出走の可能性はありえず、目標を切り替えるだろう。

 2番人気のダノンエアズロック(父モーリス)は、道中は絶好のポジション。とくに不利はなかったと思えるが、4コーナーではすでに圏外を思わせるフットワーク。R.キング騎手は一応最後まで追っている姿勢には見せたが、実際にはもう無理はしていなかった。条件賞金1200万円。皐月賞出走のボーダーラインになる可能性はあるが、ここでこういう負け方をしては無理などできない。トロヴァトーレとともに、期待の注目馬としてはまったく残念だが、立て直しを図ったあとに再出発になると思える。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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