地方競馬ノート-ダートグレード競走回顧/斎藤修

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出遅れて新たな能力を見せたケイティブレイブ/帝王賞・大井

2017年06月29日(木)18時00分

注目数:15人

撮影:高橋正和




福永騎手や目野調教師も驚くほどの切れ味を発揮


 これといった逃げ馬がいないメンバーで、逃げたのは川崎記念と同様にオールブラッシュだったが、レースを演出したのはクリソライトだった。平安Sでは最後方追走からの直線一気(2着)という奇策に出たが、今回はいつものクリソライトだった。逃げ馬を2番手から突いて息を入れさせず、緩みのないペースに持ち込む。これが大井2000mという舞台でのクリソライトの役目。今回は鞍上が大井をよく知る戸崎圭太騎手だったからこそ、その役目がきっちり果たせたのかもしれない。

 2015年の帝王賞では、逃げたクリノスターオーに半馬身ほどの差でプレッシャーをかけ、1000m通過が59秒9というハイペースを演出。自身は2着に残って、勝ったのは4、5番手に控えていたホッコータルマエ。同年大井で行われたJBCクラシックでは、逃げたコパノリッキーの2番手を掛かりぎみに追走し、1000m通過が62秒7という平均ペース。このときはコパノリッキーが逃げ切り、クリソライトは4着だった。昨年の帝王賞のように、逃げる馬がいなければみずからハナを切ることもあった。

 そして今回は見事なまでの平均ペース。2F目に11秒6があるだけで、それ以外のハロンごとのラップはすべて12秒台。1000m通過が62秒1で、後半1000mもほとんど同じ62秒3で、ケイティブレイブが差し切った勝ちタイムは2分4秒4。道中では一度も13秒台を記録することない文字通りの平均ペースは、息の入らない厳しい流れだったと思われる。

 川崎記念を逃げ切ったときのオールブラッシュは道中で13〜14秒台にラップを落とすところが何度かあって直線で後続を突き離したが、今回クリソライトに突かれての前述のようなペースの逃げでは、さすがに苦しくなって4コーナーの手前で一杯になった。

 その緩みのない流れに見事ハマったのが、図らずもスタートで躓いて出遅れたケイティブレイブだった。

 前半から縦長となり、向正面中間ではケイティブレイブ以外の中央6頭を含む9頭が先行集団を形成。ケイティブレイブは、その集団から離れて12番手を追走していた。4コーナー手前で先行集団の地方馬はすでに淘汰され、中央6頭が一団。4コーナーを回るところで、ようやくその直後に迫ってきたのがケイティブレイブで、直線では前を行く6頭を並ぶ間もなく差し切った。

 ケイティブレイブの福永祐一騎手は、出遅れて後方からになっても慌てず後方のまま脚を溜め、そして上り3Fで発揮した36秒5という末脚は見事だった。直線一旦は単独先頭で粘っていたクリソライトの上りは37秒9で、3着以下は38秒以上。その数字を見てもケイティブレイブの末脚が際立っていたことがわかる。これまでは逃げるか2、3番手追走で、どこまで粘れるかというレース運びがほとんどだったケイティブレイブに、後半それほど鋭く切れる末脚があったのかと驚いたのは、見ている我々だけでなく、福永騎手や目野哲也調教師も同じだったようだ。結果、中央7頭のうち唯一GI/JpnI勝ちのなかったケイティブレイブに初タイトルがもたらされた。

 直線一旦は抜け出したクリソライトは2着。この馬には、やや厳しいペースになってのスタミナ勝負が向いているようだ。3連覇している2400mのダイオライト記念は、その持ち味が生かせる舞台なのだろう。

 1番人気に支持されたアウォーディーは3番手を追走し、2着のクリソライトからも3馬身という決定的な差をつけられての3着。「昨年暮れから気の悪いところを見せるようになって、血統的なところがあるのかなあ」と、武騎手は首をかしげていた。

 勝ったケイティブレイブが見せた、厳しいペースで流れて直線で末脚発揮というのは、まさにサウンドトゥルーがやってきた勝ちパターン。そのサウンドトゥルーはといえば、早めの6、7番手を追走。スローに流れた昨年末の東京大賞典では5番手を追走しながら、最後は脚色が同じになって3着。今年の川崎記念は直線で自慢の末脚を発揮したものの、道中で何度か息を入れたオールブラッシュに逃げ切りを許しての2着。今回も逃げ馬が不在となれば、早め早めのレースとなったのは仕方ない。東京大賞典、川崎記念でのあと一歩というレースがあったからこそ、難しいペース判断を強いられ、今回も直線でじわじわと伸びてはいたものの、見せ場をつくれずの4着だった。

 中央勢が上位7着までを独占し、地方最先着の8着は中央準オープンの実績があったタマモネイヴィーで、走破タイムは2分7秒1。「楽な手応えであの位置(4番手)が追走できた」(山本聡哉騎手)というウマノジョーは10着で2分7秒8。ウマノジョー1着で、タマモネイヴィー2着だった大井記念の勝ちタイムが2分7秒6だったから、今回出走していた地方の上位馬も現状での能力は発揮している。


【掲載場所変更のお知らせ】
斎藤修『地方競馬ノート-ダートグレード競走回顧』は次回より、ニュース枠にて掲載いたします。次回更新は7月7日(金)18時、スパーキングレディーカップの回顧をお届けする予定です。引き続きご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

netkeiba編集部
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コラムニストプロフィール

斎藤修
斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。