アメリカ大リーグのファンにとって、昨年はイチロー選手の連続200安打記録が途切れた年として記憶されるだろう。
途中、2008年にはウィリー・キーラー以来、107年ぶりに8年連続の200安打を達成した。
イチローの記録自身が素晴らしいのは言うまでもない。
だが、その副産物として1世紀も前に活躍した名選手の功績を再びファンに知らしめたのも素敵な功績となった。
きっと、長い大リーグの歴史の中には、偉大な記録を持つ人が何人も埋もれているのだろう。
島田明宏氏の「消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡」がJRA馬事文化賞を受賞した。
この本を読む前には、長吉(本を真似て、こう書かせていただく)のことは、クリフジでダービーを勝った騎手ということくらいしか知らなかった。
ところが、戦争に翻弄され活躍期間は短かったものの、騎手としてもかなり巧い人だったことをこの本に教えられた。
長吉がクリフジでダービーを勝ったのは、彼が20歳3か月の時だ。
しかし、昭和29年9月以前の記録は、すべてが完備していないため、JRA記録には一切カウントされていないのだそうだ。
だから、JRAの記録としては、ダービーの最年少優勝騎手は、23歳7か月の田島良保となっている。
今年は近代競馬150年の節目の年だというが、残念ながら公式記録としてカウントされるJRA(日本中央競馬会)の歴史はまだその半分くらいでしかない。
昨年はイチローの記録だけでなく、デビュー2年目から毎年続いていた武豊のG1勝利記録がストップした。
この記録だけでなく、年間最多勝、通算勝利数など、彼の数々の記録は永遠に残り、おそらく誰も破ることはできないのではないかと思う。
さらに数十年から数百年の長い月日が経過すれば「武豊」も歴史の中にのみ存在し、その頃の競馬ファンは誰もその名前を知らないだろう。
そんな頃に、彼の記録を破る名騎手が現れたとしたらどうだろうか。
その時には誰も見たことがない「武豊」を記録で調べたファンがその凄さに驚くことになるかも知れない。
しかし、昭和29年以前に活躍した前田長吉の名前がファンの前に出てくることはおそらく無いのだろう。
そんな歴史に埋もれてしまいそうな名騎手の物語を掘り起こし、伝えてくださる作品があることは競馬ファンとしてとても幸せなことだと思う。
馬事文化賞受賞おめでとうございます。
ケイバにどっぷりの人です。気の向くままにコラムというか、思ったことを書き綴ることがあります。現在、ブログは休眠中。しばらくは、ここのコラムを使って忘れた頃に書き綴る予定です。ブログ...
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