この「ご指名対談」企画も、今回の恭介騎手でラスト。最終章を飾るゲストは、川田将雅騎手です。プライベートでは親交がないというおふたりですが、どうやら恭介騎手は、以前から川田騎手に聞いてみたかったことがたくさんあるよう。技術向上に向けた取り組みやオフの過ごし方まで、川田流アドバイスで恭介騎手が変わる!?
■川田騎手の鐙がすごく長くなったのはなぜ!?恭介は“ほんわか”なイメージ
──ご指名対談も恭介くんの回が最後です。そしてゲストは川田さん!
川田 正直、“なんで俺なんだろう…”って感じです。恭介とは競馬場で話をするくらいで、ご飯を食べに行ったこともないから。
恭介 あの〜、僕と松山、1年目に川田さんと(藤岡)佑介さんにご飯連れて行ってもらったことあります!
川田 え? ゴメン…覚えてないわ(苦笑)。
──川田さんが後輩ジョッキーと話をしているのは、なんだか新鮮です。失礼ながら、あまり“話しかけやすい先輩”ではないような…。
川田 でしょうね(笑)。改めて、なんで俺だったの?
恭介 僕は今年で5年目なんですけど、川田さんは5年目の段階で、もうずっとずっと上のほうにいましたよね。どうやってそこまで上り詰めたのかを知りたいですし、あとは騎乗法についてもお聞きしたかったことがあるんです。それと、普段どういうことを考えて過ごしているのかとか、川田さんのように若くしてトップジョッキーになられた先輩の生活パターンがすごく気になっていたので。
川田 岩田さんや(福永)祐一さんなど、すごい先輩がたくさんいて、まだまだ勉強中の身ながら、そういってもらえるのはすごくうれしいよ。
──川田さんのなかで恭介くんはどんな印象ですか?
川田 最初は、(松山)弘平と恭介を見て、なんか“ほんわか”したふたりだなって思ってました。そのうち、双子のお兄ちゃんが美浦から移ってきて、見分けがつかなくなって(笑)。今はもうわかりますけどね。初年度は弘平のほうが活躍してたから、そのあたり、佑介に追いつきたくて頑張っていた自分と、似たようなところがあるなって。とはいえ、自分と同じ匂いはまったくしませんでしたけど(笑)。
──たしかに、まったくタイプが違いますものね。さっそくですが、今一番、川田さんに聞いてみたいことはなんですか?
恭介 はい。最近、道中の姿勢や鐙の長さなど、乗り方を変えられましたよね? それはやはり、ヨーロッパに行かれた影響ですか?
川田 いや、行く前からだよ。もともとはすごく短い鐙で乗ってたんだけど、今は馬の作りも変わってきて、抱えて動かさなきゃ動かないというか、ハミを噛まして体を詰めて、そのバネを利用して動かしていく…というように変わってきているでしょ。昔のように、ハミを掛けずに折り合いだけ気をつけてプラーンと乗っておけば、終いでパンッ! と弾けてくれる馬がいるかというと、今はそうそういないから。
恭介 そうですね。いませんよね。
川田 そのあたりの変化を感じて、じゃあどうすれば一番脚が溜まるのかを考えていった結果、海外からくるトップジョッキーは、みんな鐙が長いことに気づいてね。それはなぜかと考えたときに、やっぱり道中のコントロールに重きをおくと、ああいう長さになるんだろうなって。
恭介 向こうは馬場もタフでしょうから、道中のコントロールがより重要になってくるということですね。
川田 正直、直線でどれだけビッシリ追ったところで、1馬身変わるかどうかわからない。でも、道中でうまく溜めて、できる限り余力を残して直線に入ることができれば、より伸びてくれるようになる。ということは、道中でいかに馬をコントロールして、いかに楽に走らせてあげられるかが重要だなって。で、いろいろ試してみた結果、ここまで鐙が長くなったと。
鐙を長くしてからのほうがやりやすくなった
恭介 だいたいどのくらい長くしたんですか?
川田 一番詰めていたときに比べると、16cmから17cmは長くなってる。
恭介 え!? そんなに! それはすごいですね。
川田 一気に伸ばしたわけじゃないよ。いろいろ試しながらね。
──そういう川田さんの変化に気づいて、注目されていたんですね。
恭介 はい。川田さんといえば、すごく鐙が短いイメージがありましたから。それが最近は本当に長くなって。鐙を長くするということは、掛かったときに脚が前に行ってしまう可能性がありませんか?
川田 うん、そうだね。
恭介 そういうとき、どういった対処をしてるんですか? ガッツリ引っ掛かったときの引っ張り方が難しくなりますよね?
川田 うん。だから、ガッツリ引っ掛かる前に収めなくちゃダメ。
恭介 噛む前に、ということですか?
川田 噛み出しても、そこで我慢させる。引っ張って我慢させるのではなくて、その場でキープする。引っ張って重心がガンッ!と後ろに行ってしまうのは、僕は最終手段だと思ってるよ。もう最後の最後、もうどうにもならない、このままだとほかの人に迷惑を掛けてしまうし、自分も落ちてしまうかもしれない…っていう状況になったときだけ。
恭介 ということは、(噛んでいることに)目をつむった状態でキープするということですか?
川田 僕のなかでは、その場で重心を低くするイメージ。で、馬が譲った瞬間に、僕もパッと譲れるようにする。引っ張っていたら、馬が譲ってきても戻るのに時間がかかるでしょ? だから、引っ張るのではなくて、抑える、我慢する。我慢しているうちに、馬も我慢してくれるようになる。で、馬が我慢してくれたら、譲ってあげる。その繰り返しだね。
恭介 そういう作業と鐙の長さは関係ありますか?
川田 うん。鐙を長くしてからのほうがやりやすくなった。そのために伸ばしたわけだからね。鐙が短いと、バランスを取るのも大変。ちょこっとしか乗ってないわけだから。だから、何かがあったとき、すぐに拳が浮いてしまったり、重心が後ろに行ってしまったりするけど、馬との接地面を広く取ることで自分のバランスを保つことができれば、ある程度、その場でキープすることができる。
恭介 なるほど。すごくわかりやすいです。たしかに余程のバランス感覚がないと、短い鐙ではできないことですよね。
【次回のキシュトーーク! は?】
競走馬の変化に伴い、鐙の長さを変えたり、フランスに修行に出かけたり。技術向上に向けた研究やチャレンジを積極的に行っている川田騎手ですが、はたして彼を突き動かすものとは!? 次回は川田騎手のモチベーションに恭介騎手が迫ります!