スマートフォン版へ

黒船来襲(クロフネ)

  • 2013年12月23日(月) 12時00分
クロフネ

クロフネ





◆日本を震撼させた黒船来襲物語はデビューから1年たらずで幕を閉じた

 天才肌の馬は、走るたびに新たな資質を披露し、その怪物ぶりを上乗せしていく。才能に枯渇というものがない。

 まさにクロフネがそうだった。スピード競馬には似つかわしくない、大きなゆったりとした走法で、何だか遊んで走っているようにも見えた。それでいて、2歳の新馬戦と続くエリカ賞をレコード勝ち。早くから抜けた能力を見せていた。

 馬名は江戸末期の1853年、浦賀沖に来航して日本に開国を迫ったペリー率いるアメリカ艦隊の黒船に由来する。

 それから1世紀以上を経て、日本の競馬界にも似た状況が起きた。生産者や馬主を守る目的から、日本は外国産馬の出走も厳しく制限してきた。この鎖国競馬に対して、海外から自由化を求める強い圧力がかかるようになったのである。

 そこで段階的に門戸開放を実施。最後の砦となっていた3歳馬の日本ダービーも、頭数の制限つきながら2001年から外国産馬の出走を認めた。アメリカ産馬のクロフネが、日本ダービーを迎えるのがちょうどこの2001年だった。オーナーサイドがそれを意識して名づけたのだろう。

 確かにクロフネの強さは、黒船来襲そのものだった。3歳初戦の毎日杯も2着に5馬身差。日本ダービー門戸開放元年に、いきなり外国産馬が勝つシーンが現実味を帯び、日本の生産界は戦々恐々としたものである。ただ当時は、外国産馬が日本ダービーに出走できる枠はまだ2つ。続くGIのNHKマイルCで2着以内に入ることが前提条件だった。

 しかし、クロフネはここでまたも能力の違いを見せつける。先行馬に有利なスローの展開のなか、最終コーナーを回ってもまだはるか後方にいたが、永遠に続くかのような長い長い末脚を繰り出して勝利したのだ。従来の日本の常識ではあり得ないことだった。

 晴れて日本ダービーに挑んだクロフネ。しかし、権利取りのNHKマイルCで死力を尽くし、そこから中2週で日本ダービーというローテーションはさすがにきつかった。それでも5着に食い込んだのは、この馬の底力と言うしかない。

 外国産馬ゆえの不遇は、秋になってもついて回った。照準を天皇賞・秋に合わせたところ、賞金不足ではじかれてしまった。そこで仕方なくダートの武蔵野Sに出走する。ダートは未経験だったが、ここでクロフネはさらなる怪物ぶりを披露することになる。

 東京ダートのマイル戦を、1分33秒3のレコードで勝利したのだ。2着を9馬身も突き放し、従来のレコードを1秒2も短縮していた。続いて世界の強豪を迎えてのジャパンCダート。ここでもクロフネは驚異のレコードで駆け抜けた。2着に7馬身差、従来のレコードを1秒3も短縮していた。

 だが、日本を震撼させた黒船来襲物語は、ここで幕を閉じることになった。間もなくして、サラブレッドにとって当時は不治の病だった屈腱炎を発症。暮れも押し迫った12月26日、引退が発表されたのである。

 デビューから1年たらず。わずか10戦。私たちが見たものは、クロフネが持って生まれた資質の、果たしてどれだけの部分だったのだろう。惜しげもなく才能を披露し、短期間に燃え尽きる。いかにも天才らしい幕引きだった。


◆レース詳細
2001年11月24日
第2回 ジャパンカップダート(GI) 東京/ダート左 2100m/天候:晴/ダート:良

1着 クロフネ       牡3 55  武 豊  2:05.9
2着 ウイングアロー    牡6 57  横山典弘 7
3着 ミラクルオペラ    牡4 57  幸英明  1/2

◆競走馬のプロフィール
クロフネ(牡3)
父:フレンチデピュティ
母:ブルーアヴェニュー
騎 手:武 豊
調教師:松田 国英(栗東)
馬 主:金子 真人氏
生産牧場:Nicholas M. Lotz


■お知らせ■
年末年始も、通常通り毎週月曜に更新いたします。


60万DL突破!伝説の名馬に挑め!

60万DL突破!伝説の名馬に挑め!

60万DL突破!伝説の名馬に挑め!
 爽快!競馬パズルゲーム「パズルダービー」、60万DL突破!伝説の名馬に挑め!

「パズルダービー」はマッチ3形式(同じ色を3つ揃えるブロック消し)のパズルと競馬が融合し、伝説の名馬のシナリオに挑戦する競馬パズルゲームです。レースでは、ディープインパクトやオルフェーヴルなど名馬のシナリオを完全再現。競馬ファンなら感動再び、競馬を知らない方はパズルを楽しみながら、競馬の魅力を知っていただけます。

 登場する名馬は700頭以上。また、週末に開催される中央競馬とのリアル連動イベントや各種キャンペーンも満載です。この機会に是非お楽しみください!

「嗚呼、愛しき名馬たち〜netkeiba 名馬列伝〜」では、記録と記憶に残る伝説の名馬の足跡をプレイバック。名馬たちが繰り広げた伝説の数々が蘇ります!

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング