中山記念が豪華メンバーになった裏側/トレセン発秘話
◆戸田博文調教師が指摘する春番組の問題点
「すごいですね。G1レベルと言って差し支えないんじゃないですか」
先週、手塚厩舎の矢嶋助手に想定メンバーを伝えると冒頭の言葉が返ってきた。確かにこれほどの実績馬がよくぞ揃ったもの。むろん、今週のG2中山記念についての話である。
天皇賞馬に皐月賞馬、桜花賞馬にマイルCS優勝馬とG1馬4頭がエントリー。加えて登録16頭中、14頭が重賞勝ち馬。昨年の覇者ナカヤマナイトがかすむほど、ラインアップは壮観だ。
しかしである。まだ寒いこの時期に、実績馬がこぞって始動するのも不思議な話。内回りの舞台設定も、今春に控える古馬G1とリンクするとは言い難い。中山記念の“集客力”の謎に迫るため、まずはアユサンの手塚貴久調教師に番組選択の理由を聞いてみた。
「今春の最大目標は当然ヴィクトリアマイルだけど、ブランクの長さを考慮すると本番前に最低2回は使いたかった。当初視野に入れた東京新聞杯は、仕上がり途上のためパス。ローテから逆算した結果がここになった」
なるほど長休馬にとって早めの足慣らしも必要ということか。一方、皐月賞馬の場合は? ロゴタイプを管理する田中剛調教師はこう語る。
「馬場が悪かった札幌記念を走ったダメージが大きかったので、レースをどこと決めず、体調に合わせ始動する方向でした。年明けに山元トレセンに馬を見に行くと、それまで幅があるとは言えなかったトモが盛り上がり、お尻が真四角に見えた。これなら、となったわけです」
今年の豪華布陣、両者の声を合わせれば単に“偶然の一致”かもしれない。ただ、各馬の方向性がこうも重なる背景には、戸田博文調教師が指摘する次の問題点も絡んでいそうな気がする。
「宝塚記念(6月29日)の施行は初夏。結局、春はチャンピオンディスタンス(10〜12ハロン)のG1がひとつもないんだよね。使えるレースは極めて限られるし、春に海外遠征する馬が多いのはそんな理由もある」
仮に“使いたいレースがない”という理由だけでG2に実力馬が揃うとなると逆に寂しい話。実績馬が早期始動する近年の傾向からも、そろそろ春季番組の見直しがあっていいのかもしれない。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)