川須栄彦騎手が語る「数字の裏側」第2回。幅員や馬場状態など、騎手はどんなことを思っているのかを探っていきます。さらに競走馬別成績から、もっとも勝利をプレゼントしてくれた馬のことも語っていただきます!
(取材・文/大薮喬介)
■今年の夏はコクります!――開催によって幅員が替わりますよね。場合によっては開催日の前半と後半で替わることもありますが、川須騎手は仮柵の移動を意識されたりしますか?
川須 もちろんしますよ。といっても、頭の片隅に置いておくくらいですね。それよりも馬場の荒れ具合を意識します。とくに開催が進むにつれて荒れてくると、どこを通ったらいいかをすごく考えますね。内が荒れているからといって、じゃあ外を回ったほうがいいかというと、距離を走らせてしまうし。馬力があれば、ロスのない内を通る選択肢もありますけど、どこを通るかは本当に難しいんですよ。だから、同じ競馬場でも1レース1レース、馬に合わせて乗っていますね。
――レースが進むにつれて、進路取りがわかってくることもあるんじゃないですか?
川須 そうですね。ただ、土曜日の午前中は内を通ったほうが有利だったのに、日曜日の午後になったら外差しが決まるようになったりすることもあるんですよ。まあ、馬場だけが原因ではないと思うんですけど。外差しが決まったときは、たまたま勝った馬の力が抜けていただけかもしれませんし。
――それをどう読むかが騎手の見せ所なんでしょうね。では、稍重や重馬場などはどうでしょう? ちなみに、川須騎手はダートの稍重がもっとも成績がいいです。
川須栄彦騎手馬場状態別成績
川須 ダートの場合は、稍重や重だと時計が速くなるので、後ろからの競馬だと勝負にならないことが多いですよね。だから、意識的に前で競馬をするようにはしています。まぁ、馬場うんぬんではなく、常に“勝負できる位置にいる”ということを意識しているので、重だからといって特別な意識はないんですけど。
――芝はどうですか? 最近、不良馬場はめったにないですが、競馬をしにくいと思ったりはしませんか?
川須 う〜ん、それはないですね。走っているのは馬たちなので。ただ、雨は降ってほしくない!
――ああ、視界が見づらくなるからですよね。
川須 そうです。あっ、馬場でいえば、去年の函館はひどかったです。時計がいつもよりも10秒くらい遅かったので、初めて馬場で悩みました。行ったら行ったで止まってしまうし、後ろから行けば届かないし。普段だと、少々の重馬場なら、馬を上手にエスコートすれば大丈夫だと思っているんですけど、あのときは本当に難しかったです。
――確かに去年の函館はひどかったですよね。ちなみに、今年も函館に参戦するんですか?
川須 いや、今年は阪神から小倉の予定です。コクります!(笑)。
今年はコクります!(笑)
――川須騎手が参戦なら、今年の小倉は激戦区になりそうですね。
川須 大暴れできるように頑張らないと。横断幕の数は(他の騎手と比べても)負けていませんからね。
――地元ですもんね。やはり、小倉が一番横断幕の数が多いんですか?
川須 そうですね。でも、最近は他の競馬場でも増えましたよ。本当にありがたいです。
――今年の小倉は、川須騎手の横断幕の数にも注目ですね(笑)。話がそれたので元に戻します。次は競走馬についてですが、もっとも勝利数の多かった競走馬はわかりますか?
川須 アイファーソングですよね?
――おおっ、当たりです!
川須 確か僕が乗って7勝したんですよね?
――それはハズレです…。
川須 えっ!? じゃあ、6勝?
――5勝です…。
川須 あれー、7勝したと思ってたのに、おかしいな…。
川須栄彦騎手競走馬別成績
――どのような馬だったんですか?
川須 この馬はいったん調子を崩すと、立ち直るのに時間がかかる馬だったんですよ。最近もあまり成績がよくなかったんですよね。結局、船橋に転厩になったそうです。
――えっ、そうなんですか!?
川須 松山先輩が騎乗した栗東S(5月18日)が最後でした。
――最後は川須騎手じゃなかったんですね。
川須 そのとき、僕は騎乗停止中で…。まあ、そうではなくても、乗せていただけたかどうかはわかりませんけど。競走成績の全勝利はすべて僕が乗ったときじゃないですか?
――そうですね。しかも勝ったレースは、すべて逃げ切りです。
川須 一本調子のところがあったので、条件戦まではそれでも通用していたんですが、オープンに上がってからはなかなか結果が出ませんでした。そこを改善できればもっとやれたと思うんですけど…。本当にいいパートナーだったので、船橋にいっても頑張ってほしいですね。
【次回のキシュトーークは?】
次回は、これまで川須騎手が騎乗した最重量馬、最軽量馬のことを中心に聞いていきます。川須騎手が思う理想の馬体とは? 乞うご期待!