国枝厩舎の光明 ホワイトエレガンス/トレセン発秘話
◆国枝厩舎2歳世代の大きなテーマとは
国枝栄厩舎に暗雲垂れ込める――とは言いすぎだろうか。先週出走予定だった良血サンマルティン(牡=父ハービンジャー、母ディアデラノビア)が、投票目前にデビュー延期を決定。大きな故障が原因ではないにせよ、この事実が陣営に与えるダメージはいかほどだったか。それはトレーナーの次の言葉から浮かび上がる。
「牧場サイドからゴーサインが出ても、調整のための稽古と実戦を想定した稽古では質が違うからね。入厩してからまだ体力不足と判断せざるを得ないパターンも結構多いんだ。サンマルティンもそんな一頭だったわけ。仕方ないって言えば仕方ないんだけど…。去年が去年だけに、欲を言えば順調にデビューして最初に結果を出したかったな」
師が言う去年とは現3歳世代を指す。GIIニュージーランドTを制したショウナンアチーヴなどの活躍馬もいる一方、いまだ勝ち上がれずにいる現3歳馬も20頭以上。その原因は馬の資質ではなく体質だ。軌道に乗れずに入厩と退厩を繰り返す中で、素質を開花できない馬が大半…。ゆえにいかに順調であるか、それこそ今年の2歳世代の大きなテーマであったと言えよう。
しかし、反省すべき点を反省し、切り替えるところは素早く切り替える。その柔軟な姿勢こそがリーディング上位を保つ“国枝流”。逆に今年の2歳馬で最もタフな馬を聞くと、弾んだ声で今週土曜(14日)東京の芝1400メートルを予定するホワイトエレガンス(牝=父クロフネ、母レディベローナ)の名を挙げてくれた。
「一般的に牡馬よりは牝馬、長距離より短距離志向のほうが完成は早いというのもあるけどね。今在厩する8頭の中でも、格段に出来上がっている。ゲートを一発合格するなどセンスもいいし、走りに前向き。先週から仕切り直しの2歳戦の第一歩、これで好スタートを切りたいね」
活気に満ちた同馬の姿は、暗雲の隙間から鮮やかに差し込む一筋の光明でもある。昨年はわずか2勝に終わった国枝厩舎の新馬戦。暗雲を吹き飛ばす意味でも、今年の2歳世代こそ本物をアピールする意味でも、ここは踏み外したくない“最初の一歩”となる。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)