7月のキシュトーークは、巷にある『競馬の格言』の真相に迫ります。実際に競馬で乗っている騎手はどう思っているのか? 国分優作騎手と国分恭介騎手がその疑問に答えてくれます!(取材・文/大薮喬介)
牝馬の狙いどころはやっぱり夏?
――今回は、巷にある競馬の格言についてお聞きしていきたいと思います。ちなみにおふたりは、知っている格言はありますか?
優作 あ〜、聞いたことがあります。女の子(牝馬)がなんちゃらとかですよね?
――牝馬にまつわる格言はいくつかあります。例えば、「牝馬は格よりも勢い重視」とか。この格言はどう思いますか?
恭介 実績のある馬よりも連勝している馬のほうがいいってことですよね? それはあると思いますよ。昇級したばかりでもアッサリ勝つこともありますし。
――実際に乗られていて、そう感じますか?
恭介 調子がいいときは、成績が崩れることはあまりない気がしますね。
優作 でも、それは牡馬にもいえることじゃないかな。女の子は季節繁殖動物だから、フケにしても年間を通してくるわけじゃないし。調子が良い悪いは、牡馬と変わらないと思いますよ。
恭介 フケにしても今は抑える薬があるしね。競馬に嫌気が差してしまうと、走らなくなることはあるかもしれないな。
優作 それはあるかも。気持ちがレースに向いているうちに、たくさん勝っているのかもね。ひねくれやすいからなぁ、女の子は。
――なるほど。牝馬が走らなくなるのは、調子の良し悪しや能力に陰りを見せるというよりは、気持ちの面が大きいんですね。
恭介 ええ、女の子が突然走らなくなるのは、気性の問題がほとんどだと思います。
――では、「夏は牝馬と芦毛を買え」というのはどうです?
優作 芦毛ですか!? 初めて聞いたなぁ。
恭介 う〜ん、(芦毛は)イメージないですね。
優作 女の子の場合は、例えば夏場の平場のレースだと、減量騎手を起用することが多くなるじゃないですか。もともと牡馬よりも斤量が軽いうえに、さらに斤量が軽くなるので、好走しやすくなるのかもしれないですね。それに夏場はハンデ戦も多いですし。あとは、牡馬は暑さに弱いというのも聞いたことがあります。
優作「牡馬は暑さに弱いというのも聞いたことがあります」
恭介 そうなの?
優作 らしいよ。
――2011〜2013年で季節ごとに調べてみたのですが、若干ではありますが、牝馬は夏競馬のほうが成績はいいです。芦毛は夏ではなく、秋競馬が良かったですね。
牝馬と芦毛の夏競馬成績
恭介 厩舎の人が「この馬は暑くならないと走らないんだよ」っていう馬は、だいたい女の子ですね。
優作 あとは、脚さばきが堅い馬は夏のほうがいいです。冬だとコズんでしまうけど、夏場はそれが緩和されますから。
――では、芦毛はどうです?
優作 いやぁ、聞いたことないです。じゃあ、芦毛の牝馬だと、もっと走るのかな?
――調べてみたんですけど、牝馬の全体成績と変わりませんでしたね。ちなみに芦毛馬にはどんなイメージがありますか?
優作 あくまでも僕のイメージですけど、口向きが悪い馬が多いかな。
恭介 ズブいイメージはない? 勝負どころはズブいのに、最後まで脚を使うみたいな。
恭介「(芦毛馬って)ズブいイメージはない? 勝負どころはズブいのに、最後まで脚を使うみたいな。」
優作 まぁ、頭数自体も少ないですし、毛色も目立ちますから、口向きが悪いとか、ズブい、夏に強いっていうのは、ただ単に印象に強く残っているだけなのかもしれないですよ。
――結論は、「牝馬は夏に強いけれども、芦毛はそうでもない」でしょうか。では、次にいきましょうか。「夏場の休養明け馬は走る」はどうですか?
優作 夏限定ですか!? う〜ん、意識したことがないなぁ。
恭介 要は夏は馬体を絞りやすいから、休養明けでも仕上がっているということじゃないですか。
優作 ああ、なるほど。確かに冬競馬だと絞りきれなくて、一度叩いてからというのはあるもんなぁ。夏のほうがフレッシュな状態で、かつ仕上がりやすいから走るということか。
――ところがですね。過去のデータで調べてみると、夏ではなく秋のほうが成績は良いんですよ。
休養明け馬の成績
優作&恭介 競馬の格言、全然当たってないじゃないですか!
【次回のキシュトーークは?】
次回は「1格、2調子、3展開」、「距離実績よりコース実績」など、引き続き「競馬の格言」のウソ、ホントを国分兄弟に聞いていきます。果たして、馬券に役立つ格言はあるのか!?