ゴールドシップ凱旋門賞は“素顔”で挑む!/トレセン発秘話
◆馬具はすべて外し!
大歓声に包まれた札幌記念の余韻が残る全休明け(26日)の札幌。当方の◎ロゴタイプ(8着)を担当する佐々木助手が落胆気味につぶやいた。
「負けるにせよ、このデキなら十分に見せ場をつくれると思ってた。それがあの結果ですからねぇ。早熟なんでしょうか…」
5ハロン通過58秒4。息もつかせぬハイペースを2番手追走…。さすがに展開は厳しかったと言えるだろう。それでも、だ。
「一瞬も脚を使えなかった」(村田)のは解せぬところ。良化途上だった今春の中山記念(中山芝内1800メートル)さえジャスタウェイから0秒6差3着に踏ん張ったのだ。それを思えば早熟の指摘もまた的外れの気がする。
今思い浮かぶ唯一の敗因は距離。もともと皐月賞をレコード勝ちしたほど非凡なスピードを誇る馬。現状で二千は微妙に長いかもしれない。もし今秋、マイル路線を進むようなら見直せないか…。そう落ち込まず前を向こうよ、佐々木クン!
一方、同じく馬房の前で首をかしげていたのが、同2着ゴールドシップの担当、今浪厩務員だった。
「当日朝の計量で508キロあったんやで。それがレースでは502キロ。6時間で6キロも減るなんてことあるやろか? おかげで(須貝)調教師からは“出国までに15キロ増やしてくれ”と言われるしなぁ。栗東への輸送もあるし、厳しい注文やで。カイバの量はもちろん増やすが、15キロとなると配合も考えなアカン。誰か知恵を貸してほしいわ」
今浪さんのこのボヤキは、凱旋門賞への戦いがすでに始まっていることを意味する。負けて悩み、勝っても悩む。絶対の正解がないのが、生き物相手のこの世界の難しさであろう。
「凱旋門賞はブリンカーだけでなく、馬具をすべて外して挑むことになりました。題して“素顔のままで”。このキャッチフレーズでいこうと思います」とちゃめっ気たっぷりに伝えるのは北村助手。まさに手を替え品を替え…。常に妥協せずベストを目指す各関係者の情熱こそ、数日前、4万6000の観衆を札幌競馬場に集めた最大の原動力だと思い知らされた。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)