“屈強世代”の頂点へラグーンが台頭開始/トレセン発秘話
「順調なのが何より。無事じゃないと何も始まらないからね」
これはベテラン騎手=横山典弘が好んでマスコミに発する言葉。話を聞くサイドからすれば“もう少し具体的な話を”と思わなくもない。とはいえ、である。21日に行われる菊花賞トライアルGIIセントライト記念の顔触れを見ると、彼が口にする「順調」の素晴らしさもいくらか共感できよう。
ダービーの2,3,4,5,6,10着馬が出走。開業から38年目、来年2月で定年を迎える大久保洋吉調教師が「これだけメンバーが揃うセントライト記念はちょっと記憶にない」と言うのだから、おそらく史上最高の豪華ラインアップとみてよかろう。
裏を返せば、これは現3歳世代の頑強さの表れ。牡馬に限った話ではない。オークス4着ニシノアカツキ(屈腱炎で引退)を除けば、クラシック路線を歩んだ牝馬勢もおおむね順調に始動。ハープスターが史上2頭目の3歳牝馬による札幌記念Vを成し遂げたのは記憶に新しいところだが、好敵手に恵まれてこそ切磋琢磨できるのはサラブレッドも同様だ。
エルコンドルパサー、グラスワンダー、スペシャルウィークを輩出した95年生まれ組がサラブレッドの最強世代と宴会野郎は決め付けているが、屈強な現3歳こそ実はそれに続く可能性を秘めているのかもしれない。
さて、その意味でも楽しみな今週のセントライト記念だが、個人的な最注目馬は前出・大久保洋師が万感の思いを込めて送り出すメジロドーベルの孫=ショウナンラグーンである。
「オーナーにお願いして、夏場は放牧に出さず手元に置いて調整した。何といっても自分にすればこれが最後のクラシックだから」と師の秋にかける意気込みは尋常ではない。
鈴木正雄助手によると「まだ本格化は先かなと思うけど、夏を無事に越してたくましさを増したのも確か。春当初はトモが緩くて、ダービーに出走するとは夢にも思わなかったくらいだから。6着に負けたというより、0秒5差まで追い上げたというのが自分の中の評価。伸びシロはいくらでもある」とのこと。新星誕生の可能性も低くなかろう。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)