(撮影:高橋正和)
クリソライトが復調していなければ、近年まれに見る低調な日本テレビ盃になるところだった
予想で「中央の4頭に、元中央オープンのトーセンアレスを加えた5頭の争いだろう」と書いたが、4コーナーポケットからスタートして、1周目のゴール板に至る手前でその5頭が前の集団を形成。それ以外の馬たちとは差が開いてしまい、前の5頭とうしろの5頭はまるで別々のレースをしているかのようだった。結果もそのとおり、5頭が上位を占め、5着馬と6着馬は2秒5もの大差がついた。近年の地方のダートグレードではめずらしいことではないが、地方贔屓な見方でいえば、2着争いにはからんだトーセンアレスがいてくれてホッとしたというのが正直なところ。
レースとしては、おそらく内枠に入ったためだろう、グラッツィアがスタート後に気合を入れてハナに立ち、クリソライトが楽に2番手につけた。ほとんど差なく3頭が続き、有力5頭が一団でレースを進めた。船橋の1800mは、スタートしての直線が1コーナーまで500mほどあるため、先行争いが激しくなると最初の3Fで34秒台前半が出ることもめずらしくないが、今回はすんなり隊列が決まったため35秒2と平均的なもの。
3コーナーからクリソライトが前をとらえにかかり、直線を向いて満を持してという様子で追い出されると、あっという間に後続を突き放し、7馬身差の圧勝となった。逃げたグラッツィアは直線半ばからやや脚色が鈍り、あとの3頭が迫って2〜5着はコンマ4秒以内の差というほぼ一団での入線となった。
クリソライトは、前走マーキュリーCで2着に負けたとはいえ、59kgを背負った上に展開的にも厳しいもの。そのときに感じさせた復活の手ごたえは確かなものだったということだろう。2〜5着馬は、いずれも近走GIII/JpnIIIあたりで苦戦か、もしくは相手関係や展開などに恵まれれば勝ち負けというメンバーで、その差が7馬身あったということ。昨年のフェブラリーSを制したグレープブランデーが2番人気になったのは、復活の期待もあってのことだろうが、それも不発だった。
上がり3Fが37秒0、勝ちタイム1分50秒1というのも、過去5年のデータと比較していずれも平均的なもの。平均的なレベルとはいっても、2着以下には7馬身以上の差がついていたから、それは勝ったクリソライトだけに言えることだ。
この日本テレビ盃は、例年であれば帝王賞で上位を争った馬たちが秋のダートGI/JpnI戦線へ向けてここから始動というパターンが多いが、今回は地方馬も含めて帝王賞組の出走が1頭もなかった。そもそも現在のダート古馬中長距離路線は世代交代の狭間にあり、ホッコータルマエは復帰未定、ワンダーアキュートはようやく軽い調教を開始、ニホンピロアワーズは放牧からそろそろ戻るのかどうか、ローマンレジェンドは7月のエルムSで復活ともいえる勝利となったが、その後は放牧に出されている、という状況。唯一、コパノリッキーが早い時期から南部杯で始動ということを表明しているのみ。
仮にクリソライトが出ていなければ、もしくはクリソライトが復調していなければ、近年まれに見る低調な日本テレビ盃になるところだった。勝ったクリソライトだけが、なんとかJBCクラシック・トライアルとしての日本テレビ盃のレベルを維持したといえそうだ。