“難解”な調教時計の解釈をひもとくヒント/トレセン発秘話
◆実際の騎乗者の感覚を小まめにチェックすること
週明けの美浦トレセンで日曜(26日)東京・くるみ賞(2歳500万下、芝1400メートル)に登録のあるニシノラッシュのデキを田村厩舎の高木大輔助手に尋ねたところ、意外な逆取材が返ってきた。
「週刊誌にある1週前の追い切り時計を見てどう判断します?」
同馬がマークした数字は南ウッド5ハロン67.6秒、ラスト1ハロン13.1秒。2歳馬として悪くはないが、抜けて良くもないというタイム。返答に窮していると
「自分が乗っていて感触がすごく良かったから、時計を聞いて逆にビックリしたんです。“えっ、この程度なの?”って。あの時の違和感はまだ残ったままですよ」と思案顔。続けて「実際この数字だけ見ても、良し悪しなんて分からないですよね」といたずらっぽい笑顔を見せた。
確かに高木助手の言う通り、昨今は調教時計の解釈が難解だ。以前は縦(その馬自身の調教タイムの推移)の比較で何となく馬の仕上がりが把握できたが、今稽古の主流たるウッドコースはその日の天候次第で時計に大きな隔たりが…。
横(他馬)との比較を組み合わせなければ、数字の持つ意味が理解しづらい状況になっている。不良馬場の高松宮記念で2着のスノードラゴンがスプリンターズSでも低評価(13番人気)に甘んじたのと同じ理屈。そう捉えてもらえば、読者にもニュアンスが伝わろうか。
とはいえ、いまやウッド以上に理解不能なのが美浦の坂路コースだ。先週水曜(15日)はラスト1ハロンの最速時計が13.4秒。4ハロンが56秒台でも、しまい14秒を切れない馬が続出した。ちなみに前出の高木助手に言わせれば「あの日の坂路は脚を取られまくって、追い切りは田植えを全力で行っているような感覚(笑い)」だったとか。関係者さえも「果たしてどれほど負荷がかかっているのか推測できない」(同助手)馬場らしい。
管理するトレーナーの談話を取るのは想定班の基本作業。しかし馬券に直結させようと思えば、実際の騎乗者の感覚を小まめにチェックすること。その重要性を改めて肝に銘じた次第である。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)