美浦の悪魔ショックは今週この馬で振り払いたい/トレセン発秘話
◆素質トップレベルのタンタアレグリア
過去に何度もそう思わされたのだが、先週の土曜(22日)東京メーンで改めて痛感した。あんなひどい男はいない。そう、柴田人キュウ舎の持ち乗り助手=笹浪真志雄クンのことである。
「例年冬場は体が硬くなるんですが、今年もまたその傾向が出てきました。ここを使ったら休ませてあげたいですね。前走時計(1分23秒2)で走れば勝てる組み合わせ? う〜ん、確かにそうですが、この前は最内枠からポンと行けましたからね。対して今回は大外枠でしょ? それに昇級初戦でアッサリ勝つくらいなら1000万で足踏みしないと思うんですよ」
彼の担当馬ヒメサクラの格上げ初戦となった1600万下・銀嶺S(ダ1400メートル)。1週前、当週と角度を変えて何度突っ込んでも、返ってくるのはネガティブな言葉ばかり。熟考の末、本命を打つことを断念したところ、結果は2着に3馬身半差の大楽勝。これは悪魔の所業なのか。ゴール前は“そりゃないぜ”の言葉が口から出た。
スタートは彼がユキノサンロイヤル(05年日経賞)の担当時だから、かれこれ十余年の付き合いになる。ほぼ毎週のように話し、酒を酌み交わした夜も数知れない。しかし、である。彼のジャッジで馬券を取ったことはない。かつて一度も、だ。加えて“泣き”コメントばかりでないのが、その悪魔たるゆえん。まれに心をくすぐるような言葉もある。しかし、その馬は判を押したように来ない。勝つのは“泣いた”時ばかり。競馬取材の正解とは一体何なのか? その奥深さをたった一人で教え込む――。そんな恐ろしい男が確かに美浦にいるのである。
とはいえ、馬券相性がいい人間も幸いながら存在する。今週は国枝キュウ舎の椎本英男助手が「新馬、未勝利と2着続きで勝ちあぐねたけどウチのキュウ舎で素質はトップレベル。放牧でひと息入りましたが、いきなり決めるつもり」と語るパララサルーの半弟タンタアレグリア(土曜3Rを予定)。この馬でまずは先週のショックを振り払うつもりだ。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)