関東陣営の誇り、使命感…今年こそ“図式”変わる/トレセン発秘話
◆今年は2歳GIだけでは終わらない
ダノンプラチナがGI朝日杯FSを制した翌週のこと。管理する国枝栄調教師に祝辞を述べてから「阪神JFのショウナンアデラに続いて2歳王者が関東から誕生。西高東低の図式も少し変化が期待できるのでは」と続けると、理論派トレーナーは苦々しい表情で即座にこれを否定した。
「確かに牝馬のチャンピオンが東から出るケースは少ないが、朝日杯は関東馬が4年連続の勝利。格別な出来事ではないし、実際にこの3年で何か変わった? 最終的に関西馬が“持っていく”図式は一緒だろ。もともと東と西ではパイの大きさが違う。走る馬が1頭出たくらいじゃ、根本的な解決にはならないよ」
これを聞いた時は“言われてみれば確かに”と短絡的な自分の発想にガッカリしたのだが…。年が明けて競馬が進むにつれ、冒頭の予感があながち的外れではないと思うようになってきた。
今年はここまで3歳重賞が9鞍行われ、そのうち6勝は関東馬。特筆すべきは弥生賞、チューリップ賞を勝利したことだ。皐月賞、桜花賞の前述両トライアルを関東馬が制したのは、過去30年で2012年に続く2度目。極めて希少だ。今年こそ何か変わる――そんな気がするのは宴会野郎だけではあるまい。
実は弥生賞前日(7日)も象徴的なことがあった。当方は美浦で居残り取材を担当したが、この時に印象的だったのが2着したブライトエンブレム=小島茂之調教師の並々ならぬ決意だった。
「(札幌2歳S優勝で)クラシック出走の賞金は足りているが、ここを勝つ、もしくは本番(皐月賞)で人気になるような走りをファンに見せる意気込みで今回は仕上げた。当日のイレ込みさえなければ勝負になるはず」
結果はまさにその通りだった。関西に負けない強い馬、人気の馬をGIに送り出す…そんな関東陣営のプライド、使命感がにじみ出た言葉でもあったと受け止めている。今年は2歳GIだけでは終わらないはず。関東馬の躍進を大いに期待している。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)