初制覇となった服部義幸調教師の嬉しそうな姿
今月はばんえい競馬のことばっかり書いていますが、今回もまた書きます。
22日に行われたばんえい記念で、キタノタイショウが初優勝を果たしました。同馬を管理しているのは服部義幸調教師。数年前、ばんえい競馬が廃止の危機に陥ったとき、存続活動の先頭に立って頑張ってこられた方です。しかし、これまでばんえい記念のタイトルには縁がありませんでした。
調教師人生31年目で悲願の初制覇。ご本人も、手綱を取った大河原騎手も、本当に嬉しそうでした。そして、ファンの中にも感極まっている方が…。私も表彰式のインタビューをしながらグッと来ちゃいました。先生、よかったですね。おめでとうございます!
さて、今回のばんえい記念では、ちょっと珍しい記録が作られました。最下位(10着)のファーストスターがゴールするまでに要した13分27秒6というタイムです。ちなみにキタノタイショウの勝ちタイムは3分49秒9。それから10分近く遅れてのフィニッシュでした。
ファーストスターは難関の第2障害で転倒。そのまま数分間動けなくなりましたが、厩務員の介助(ばんえいでは、ソリが動かなければそれが認められます)を受けてようやく立ち上がり、競走を続けました。「最後の馬がゴールするまで見届ける」というファンが大勢いるこのレース。今年のその瞬間には、いつも以上に大きな拍手がわき起こりました。ファーストスターはもとより、初めてばんえい記念に出場して同馬を完走に導いた西将太騎手、よく頑張りましたね!
ばんえい競馬にもタイムオーバーのルールがあります。1着馬のゴールインから5分を経過すると“時間失格”になる、というもの。ところが、08年のばんえい記念でダイニハクリュウがその規定で失格になった後、「このレースだけは別モノだろう」という話が持ち上がり(私も主催者にそういう意見を寄せた1人です)、ばんえい記念の“時間失格”はなくなりました。今回の結果はそれによってもたらされたものです。
過去のばんえい記念(かつては農林大臣賞典)の成績を見ても、10分以上かかってゴールした(完走と認められた)例はありません。01年の中山グランドジャンプで、ランドの騎手が落馬後、再騎乗して完走したものの、走破タイムは5分08秒1。30の障害を飛び7200メートルを走るグランドナショナルの勝ちタイムも9分台です。約13分半もかかっての完走は、日本競馬史上、前代未聞のことかもしれないのです。これは大記録と言っていいでしょう。
で、もうひとつ。ばんえい記念は今年で47回目、創設は1968年となっています。ところが、地方競馬全国協会に残る成績書を見ると、同協会が設立された1962年以降、農林大臣賞典と銘打たれたオープン馬のレースが、毎年連綿と続けられていることが判明しました。今後、その歴史をあらためて見直す必要がありそうです。