スマートフォン版へ

得意の距離で得意のパターンに持ち込んだコーリンベリー/かきつばた記念・名古屋

  • 2015年05月05日(火) 18時00分


今年のJBCスプリントでは有力馬の1頭として名を連ねることになるかもしれないコーリンベリー

 エーシンビートロンが出走取消となって、中央3頭はいずれも前走を勝っているという好調馬。レースもそのとおり、3コーナー過ぎからはその3頭の争いとなった。

 行く気を見せて逃げたのはコーリンベリー。内のエナエビス、外にアイファーソング、それにメイショウコロンボと、4頭での先行争いとなったが、地方の2頭はさすがにテンのダッシュ力では及ばず。メイショウコロンボは、出遅れというほどではないものの、ややもっさりとしたスタートでダッシュがつかなかった。さらに9番枠という枠順もあったかもしれない。並びかけられるまでもなく1コーナーに入り、コーリンベリーが先頭で隊列が決まった。

 そのコーリンベリーのつくったペースは、前半3Fが36秒2で、上がり3Fは37秒1。雨で湿った重馬場は、中央のスピード馬に有利に働いたかもしれない。この馬で象徴的なのが3走前の2014ファイナルS(阪神)で、最初の1Fが12秒5、最後の1Fが12秒4という以外、途中すべて11秒台というラップで逃げ切っていた。緩みのないペースで逃げて後続に脚を使わせ、最後になお伸びて後続を振り切るというのがこの馬の強さ。今回はまさにそのパターンに持ち込み、追いすがる2頭を直線で振り切った。

 勝ちタイムの1分25秒1は、過去10年で最速。第1回から見ても今回より速い決着は、2002年のサウスヴィグラスによる、今でもコースレコードとして残る1分23秒9というとてつもなく速いタイムと、2004年地元のマルカセンリョウによる1分25秒0の2度しかない。これで通算6勝はすべてダートの1400m以下。逃げ切りでなかったのは前走のコーラルSだけで、まさに父サウスヴィグラスのダートでのスピードを受け継いだかのうようなレースぶりだ。地方で行われるダートグレードでは1400m戦が年間を通して充実しているだけに、活躍の場はたくさんありそうだ。昨年のJBCではレディスクラシックに出走した(9着)が、1800mは明らかに長い。今年のJBCスプリントでは有力馬の1頭として名を連ねることになるかもしれない。

 2着のレーザーバレットは、5番手あたりの外目を追走していたが、3コーナー過ぎで単独3番手に上がると、コースを内に切り替え、直線ではラチ沿いから2番手のメイショウコロンボをとらえた。地方の小回りコースではラチ沿いの砂を深くしていることがあるが、名古屋コースは直線が短いぶん、コーナーはそれほどきつくはなく、それゆえ内が極端に重いということもない。特に雨で湿るとどこでも同じように伸びる。横山典弘騎手はおそらくそのことを知っていたのだろう。単勝6.9倍とやや離れた3番人気だったのは、前走京葉Sでの4コーナー最後方から直線一気というレースが強烈な印象だったため、地方の小回りコースで敬遠されたのかもしれない。しかしたとえば1月のジャニュアリーSが押して6番手追走から直線での差し切りで、2月の根岸Sは6着に負けたとはいえ、5番手からの積極的な追走だった。コースや展開によって自在に立ち回れるタイプだ。

 メイショウコロンボは、前走までの3連勝がすべて逃げ切り。2番手から相手のペースでは難しいレースを強いられた。

 3着メイショウコロンボから3馬身離されて、4着ピッチシフター、5着エナエビス、6着ジョーメテオはほぼ一団で入線。ピッチシフター、ジョーメテオにはダートグレードでの好走経験がありこのくらいは走って当然だが、ダートグレード初挑戦のエナエビスはこのペースによく対応したと思う。今回はグレード別定ゆえ、GIII/JpnIIIかオープン勝ちまでという中央勢は斤量的にかなり恵まれた。ピッチシフターが2着に好走した佐賀・サマーチャンピオン、ジョーメテオが2着に好走した兵庫ゴールドトロフィーのようなハンデ戦であれば、この3頭は今後もある程度やれるのではないかという力をあらためて示した。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング