好調時にすっかり戻ったハナズが大穴候補に浮上/トレセン発秘話
◆「決して能力は衰えていませんよ」
先週の美浦トレセン。スマートフォンを手にした加藤士津八助手が、すっとんきょうな声を張り上げて当方に近づいてきた。
「見てくださいよ。台風6号が発生しました。いや〜、ヤバイなぁ。進行速度によっては競馬にも影響するんじゃないですか? ヴィクトリアマイルも重馬場だったら、もう泣くに泣けませんよ」
所属のハナズゴールは自他ともに認める道悪下手。にもかかわらず、六甲S→阪神牝馬Sと近走は雨にたたられ通し(ともに稍重)。そんな事情で“泣き”が入ったが、八つ当たりとも取れる言葉が、その後に飛び出した。
「これ、絶対に担当の野本キュウ務員のせいですよ。あの人、雨男としてキュウ舎では名高い存在ですからね。オーストラリアに遠征した昨春も驚くくらいの雨続き。日本に戻ってからだって、持ち替わりで出張に行けば、必ず雨を呼ぶ“伝説の男”なんです。よし、いざとなったら、競馬の日に有給休暇を取らせるって手もあるな(笑い)」
それから数日たって…レース当日は幸い良馬場のもよう。野本キュウ務員も濡れ衣を晴らせそうだが、実は宴会野郎も周囲から雨男とされる一人。昨年予定した我らが野球チーム「ライターズ」の試合が、悲しくも7割近く“雨中”となったのが、その理由だ。しかし、たかが人間に天候を左右する力などあるはずもない。雨男と口にするやからは、当方は腹の中で「愚民」とののしって、やり過ごしている。
ただ、仲のいい(加藤)シズヤが“愚民化”したのも、それだけ馬の具合がいい証しだろう。結果が出なかった栗東滞在時も坂路で好時計を楽々マークしていたが、美浦帰キュウ後も躍動感あふれる走りを披露。何より小柄な馬体を大きく見せ、好調時の張りをすっかり取り戻している。
「6歳牝馬ですが、決して能力は衰えていませんよ。うまくかみ合えば、まだまだ爪痕を残す鋭さは秘めています」
“近走は力負けにあらず”を強調するシズヤ。過去10年で2桁人気馬が馬券に絡むこと5回。波乱含みのGIでもあり、伏兵の一頭に加えておこう。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)