POG本の「マル秘」読み方教えます/吉田竜作マル秘週報
◆育成を担当している人間のコメントが掲載されることが増えたが注意しなくてはいけないのは…
「ザッツPOG」をはじめ、POG関連の書籍が多く並ぶこの時期に、記者なりの「読み方のポイント」を提案してみたい。
最近は厩舎取材だけでなく、牧場取材なども盛んで、育成を担当している人間のコメントが掲載されることが増えた。実際にまたがって感触を確かめているのだから、多少のリップサービスはあるにせよ、貴重な声なのは確かだが…。
注意しなくてはいけないのは牧場とトレセンでは微妙に感触に違いがあること。これを「価値観の違い」と指摘するのは松田博調教師だ。
「例えば牧場の坂路でハミを取ってビュンビュン行くような馬は当然“いい”ってなるよな。この手の馬に限って、いざ栗東に連れてくると“もう一度鍛え直さないと”ってことになるんだよ。牧場が目指すところはトレセンに馬を仕上げて送り届けることだけど、レースに向けて仕上げていくこととは、やっぱり意味合いが違うんだ」
くしくもオークスに出走するコンテッサトゥーレを例に、安田調教師から同様な発言を聞いたことがある。
「コンテッサトゥーレが最初に栗東に来たのは2歳の6月。牧場から“早く使えそう”と報告が来たので入厩させたんですが、いざ乗りだしたら息遣いは良くないし、無理できないな、と。デビューを見送って山元トレセンへもう一度戻したんです」
確か、この時期のコンテッサトゥーレは「ノドの弱さ」を指摘されていたのだが、それは成長とともに解消される類いのものだったようだ。
「あの時、無理をしなくて正解でした。(再入厩後は)息遣いの心配もなくなったし、順調に乗り込めましたから。やっぱり時期が来ないと馬は走らないんです」
この時の教訓から、安田調教師は現在ゲートを練習しているホーマンビジュー(牝=父キングカメハメハ、母ゴレラ)とルミナスエレメント(牡=父ハービンジャー、母ルミナスポイント)は「ゲート試験をクリアしたら、一度放牧に出す」ことにしたそうだ。
話を松田博調教師に戻そう。青葉賞を制したレーヴミストラルは逆に牧場サイドもじっくりやっていく方針だったし、トレーナーも「腰が甘くてかなり時間がかかる」と口にしていた。しかし、ふたを開けてみれば次週の日本ダービー出走にまでこぎつけてしまった。
牧場と厩舎では微妙に感覚が違うし、仮に両者の感覚が一致しても、いい意味で予想を裏切ることもある…これが競馬の面白さであり、POGの魅力でもあるのだろう。立場や背景の違いを考えたうえでコメントを読み、血統、馬体を参考に自分なりの判断を加えていけば、ドラフトの指名馬選びはもちろん、馬券検討の面白さもさらに増すはず。
◆POGコラムらしく、「即戦力」を紹介して締めるとしよう。
絶賛発売中の「ザッツPOG」がそのお供に…って締めは先週も書いた気がするので、ここはPOGコラムらしく、「即戦力」を紹介して締めるとしよう。
西園厩舎に2歳の“トップバッター”が入厩した。外国産馬のノンゼロサム(牡=父Speightstown、母Winendynme)だ。
「マイネルの募集馬なんですが、見てわかる通り牡馬なのに冠がついていないんです(ちなみに牝馬は現3歳世代から冠号をつけていない)。それだけ特別な馬なんですよ。いかにもスピードがありそうだし、2歳戦から活躍してくれるのでは」と西園調教師。ドラフト指名枠がある方はぜひ、ご一考を。