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予定通りのローテーションで、いざ本番へ/東京盃

  • 2015年10月01日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



まさに横綱相撲といえるレースぶり

 ここまでダート短距離路線の主役として歩んできたダノンレジェンドにとっては、まったく思い描いたとおりのレースになった。馬群に包まれる心配のない大外枠。大井1200mは、逃げ馬でなければそれほど不利ということもない。相変わらずスタートはあまりよくなかったが、この馬の強さのひとつは二の脚の速さにある。地方馬が何頭か先行する構えを見せたが、300mほど進んだところで難なくシゲルカガの2番手につけた。この位置をとったことで、余裕を持って3コーナーに入ることができた。4月の東京スプリントとほどんど同じ形だ。直線を向いて先頭に立つと、あとは後続を寄せ付けず。まさに横綱相撲といえるレースぶりだった。

 早くから目標としていたJBCスプリントに向け、これで今年の舞台となる大井1200mで危なげのない勝利が2度。しかも、東京スプリントでは水の浮く不良馬場を経験し、今回、発表は稍重だったとはいえ、ほとんど乾いている馬場も経験できた。馬群に包まれるという不安は相手もあることなのでしかたないにしても、これで本番に向けて視界良好といってよさそうだ。北海道スプリントCでの3着はあったが、黒船賞の前から描いていたローテーションを無事にクリアしてJBCスプリントへ。目標に向かってこれほど順調にステップを踏んでこられる馬もめずらしいのではないか。

 ダノンレジェンドが完全に抜け出した直線半ば、2馬身ほど離れた2番手には、内にシゲルカガ、外にコーリンベリーがいた。やはり人気3頭での決着かに思えたが、外から交わして2着に食い込んだのがドリームバレンチノだった。無理には位置を取りに行かず、4コーナーでもまだ10番手。レースの上がり3Fが36秒3のところ、この馬は35秒7で上がってきた。他の中央馬が56kg(牝馬のコーリンベリーは54kg)のところ、この馬だけ58kgを背負っての末脚は出色だった。

 ドリームバレンチノは、昨年のJBCスプリントを制し、年が明けての黒船賞で59kgを背負っての2着まで、地方のダートグレードでは連対を外さない安定感があった。しかしその後は意外な低迷。ダート短距離路線では、JpnIのJBCスプリントを勝ってしまうと、その後は斤量を背負わされることになり、活躍が難しくなるということがある。近年でも、2010年、2012年にそれぞれJBCスプリントを制したサマーウインド、タイセイレジェンドがそうだった。ドリームバレンチノも、今年出走したレースは負担重量が58kgか59kg。8歳という年齢も考えると、低迷もいたしかたなしに思えた。今回は前走プロキオンS(8着)から短期放牧を挟んでの2カ月半ぶり。調子が上向いていたのだろう。本番のJBCスプリントでは今回の2kg差が定量になるため、連覇も視野に入る。

 3着コーリンベリーは、スタートでやや後手を踏み、ダノンレジェンドよりさらにうしろから。3コーナーで3番手にとりつくまでに脚を使ってしまった。昨年12月以降、3勝2着1回という1400m戦ならそれでも対応できたかもしれないが、久々の1200m戦ということもあって厳しいレースとなった。

 逃げたシゲルカガは直線脚が上がって4着。前半3F34秒6は、このレースとしてはそれほど速いペースではない。ちなみに2着だった東京スプリントでは、前半34秒1というペースで逃げ、ダノンレジェンドの勝ちタイムが1分10秒6。今回の勝ちタイムも1分10秒9と、流れとしてはほとんど同じもの。しかし今回は、発表は稍重だが、かなり馬場が乾いてきていた。タイム云々ではなく、近走のJpnIIIよりもメンバーの質が上がって、より厳しいレースになった。さらに遠征続きで、前走サマーチャンピオンで7着に敗れた反動もあったのかもしれない。

 地方最先着は兵庫のタガノジンガロの5着で、走破タイムは1分12秒0。ドリームバレンチノと同じような位置を追走し、さすがにそこから切れる脚はなかった。とはいえデビュー以来初めての1200m戦だけに、健闘といってもいい5着だったのではないか。コーナーを4つ回る1400m戦に戻れば、今回の経験が生きてくるだろう。

 タガノジンガロと接戦の6着、7着には、サトノデートナとサトノタイガー。ともに大井1200mで1分10秒台の持ち時計があり、そういう意味でも、ダノンレジェンドの1分10秒9は、東京盃の勝ちタイムとしては平均的なものだが、そのタイム以上に厳しいレースだったといえそうだ。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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