牝馬勢が色気見せる中距離路線 再び大波乱の予感が…
◆天皇賞の穴馬発掘の手立てに
思い起こせば2週ほど前のこと。美浦トレセン南馬場の小天狗(厩務員用の調教スタンド)にある喫煙所で取材の合間に一服していると、斎藤誠厩舎の小松美彦厩務員が「随分と暇そうだな(笑い)」と声を掛けてきた。とっさに「サボっているように見えるでしょ? 違うんです。これからどの順番で厩舎を回るか…時間を有効活用するための戦術を練っているんです」と言い訳をすると、再び小松さんが真顔で返してきた。
「確かに限られた時間をどう使うかは大事だな。臨時採用のシステムが変わって、オレも斎藤誠厩舎で仕事ができるのは今年限りになった。つまりヌーヴォレコルトとの付き合いもあと4か月ばかりさ。こうなると、この秋は冥土の土産に王道路線を歩んでみたい気持ちも生まれてくる。前哨戦のオールカマーで強い競馬を見せれば、ってただし書きは付くんだけどね」
残念ながら結果は2着。これにより、同馬はGIエリザベス女王杯(11月15日=京都芝外2200メートル)で昨年2着のリベンジを狙うことに。対照的に勝ったショウナンパンドラがGI天皇賞・秋(11月1日=東京芝2000メートル)に挑む皮肉な運びと相成ったのだが…。この時、ふと頭をよぎったのが、牝馬勢(デニムアンドルビー、ショウナンパンドラ)が2、3着した6月の宝塚記念。秋の古馬戦線がもし春の流れをくむなら、小松さんが一度は夢見た王道路線も確かに牝馬にとって、敷居の高い舞台ではないのかもしれない。
自慢するつもりはないが、先週のスプリンターズSを当方は幸運にも▲◎△で射止めた。ただこれも先週の当欄に記した通り、人気薄の2、3着馬の両陣営の鼻息の荒さに混戦ムードを感じたからこそ。つまり牝馬勢が色気を見せる秋の中距離戦線もまた、大波乱が待ち受けている予感がしてならない。
昨秋の天皇賞馬スピルバーグを筆頭にGI馬4頭と、例年以上のハイレベルな組み合わせとなった今週のGII毎日王冠(東京芝1800メートル)。おそらく最重要ステップレースとなるこの一戦を、ぜひとも天皇賞の穴馬発掘の手立てにしたいところである。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)