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小野次郎調教師「こういうことがあると、この仕事っていいなと改めて思いますね」

赤見：コーリンベリーでのJBCスプリント制覇、おめでとうございます！

小野：ありがとうございます。ゴールした時は本当に感動したし、馬にもオーナーにも感謝の気持ちでいっぱいです。もう感無量でしたね。前走の東京盃後に栗東の柴田政見先生が勇退されるということでうちに来たんですけど、これだけの馬を預けていただいてプレッシャーはありました。一つ責任を果たせたのかなとホッとしましたね。

赤見：レースは好スタートを切って逃げる形になりました。

小野：出遅れ癖があるので、そこは心配していました。(松山)弘平には、「俺が責任を持つから、もしも出遅れたら最後方からでもいい。それくらい腹を括って乗ってくれ」と言ったんです。その通り腹の据わった積極的なレースをしてくれました。スタートも上手だったしその後もスムーズに行けて、前残りの馬場だったので3コーナー辺りでいけるかもしれないと思いました。

赤見：ダノンレジェンドの追撃を振り切っての逃げ切り勝ち。本当に強いレースでしたね。

小野：そうですね。前走の東京盃も、3着とはいえ一番強い競馬をしているんですよ。出遅れて途中から出していってっていう。でも今回はスムーズだったので、しっかりと力を出すことができました。

赤見：小野調教師、松山騎手ともにJpnI(GI)初制覇です。



小野：僕は重賞自体初めてですからね。本当にありがたいですよ。調教では弘平にも美浦に来てもらって、感触を見てもらいました。1か月くらいしかやってないのに大きなタイトルをもらえたわけですから、本当に馬と周りの方々に感謝しています。厩舎としてもこういう馬がいると活気が出ますし、モチベーションも上がります。騎手から調教師になって難しいこと、辛いこともたくさんありましたけど、こんなご褒美がもらえるなんて僕は本当に運がいいです。こういうことがあると、この仕事っていいなと改めて思いますね。

赤見：調教師として難しいのはどんなところですか？

小野：いろいろありますけど、やっぱり一番難しいと感じるのは、状態がいいからといって勝てるわけではない、ということですね。レースに勝つには状態はもちろん、相手関係、馬場状態、流れや展開…いろいろな要素が必要なんです。だから、毎日コツコツ積み重ねていい状態に持っていけたとしても、それが結果に繋がるとは限らない。そういうのは難しいですよね。それに、馬はなかなかわからないです。生き物ですし、毎日違いますから。だから常に勉強して、常に敏感に感じていたいと思っています。

赤見：コーリンベリーの次走はチャンピオンズカップということですが、一気に距離が延びますね。

小野：この選択に関しては、批判する方もいると思います。ただ、僕はコーリンベリーをスプリンターだとは思っていないんですよ。オーナーとの関係は、半兄コーリンギデオンからなんですけど、コーリンベリーを当歳の頃に見せてもらってすごくいい馬だと思いました。デビューしてからもずっとレースを見ていて、本当に強い馬だなと。僕がやらせてもらえるとなった時、マイルは持つんじゃないかという風に思いました。だから今回も、出遅れたら後ろから行くという選択肢を考えていたんです。この先のマイルの戦いに挑むためには、そういう競馬も必要ですから。

赤見：JBCスプリントを見ていると、スピード重視のスプリンターなのかなというイメージでした。

小野：確かに、現状ベストはそうだと思います。でもギデオンと比べると精神的にも肉体的にもそこまでスプリンター的要素は強くないんですよね。調教ではすごく大人しいですし、女の子ですがおっとり落ち着いていて。今年のフェブラリーでも内の窮屈なところから差のない10着(0.5秒差)ですから、揉まれ弱さも感じない。弘平とも話して、オーナーと協議して1800mに挑戦してみようということになったんです。



赤見：1800mまでは持ちそうだという手応えを感じていらっしゃるんですね。

小野：いろいろな要素を総合して、「持って欲しい」という気持ちです。JBCを勝ったのはすごく嬉しいですが、その分今後は使えるレースの選択肢が変わって来る。あそこで負けてたら兵庫ゴールドトロフィーも視野にと思っていたんですが、ハンデがかなり重くなりますからね。その先にフェブラリーを目標にするのならば、1200mを使ってマイルよりも、1800mで試してマイルの方がいいんじゃないかと思いました。

赤見：では、ファンの方にメッセージをお願いします。

小野：いつも応援していただき、本当にありがとうございます。お陰さまで、1つタイトルを獲ることができました。これからあの馬には恥ずかしい競馬はさせられないという責任があります。でも、まだコーリンベリーは可能性を秘めてると思うんです。僕はまだ預かったばっかりだし、いろいろチャレンジできる立場にある。オーナーも了承してくれたので、批判されるかもしれないけど、可能性を求めていろいろなところに使って行きたいです。