◆サクラゴスペル「到着後のカイ食いがカギ」
今年の2歳女王決定戦・阪神JFは昨年に輪をかけた混戦模様。配当的には穴党の心をくすぐるはずだが、何かどうもガッツが湧かない。これは50を過ぎた年齢のせい?
いや違うだろう(多分)。なぜなら、近年の阪神JFといえば、ウオッカ、ブエナビスタ、ハープスターなど“次代のスター”の登竜門。牡馬顔負けの女傑が軒並み歴史に名を刻んできたが、今年は残念ながら圧倒的な存在感を放つ馬が見当たらない。それが闘志に火をつけ難くしているのではないか。
もっとも、今秋のGI戦線を冷静に振り返れば、すべての路線で主役なき戦いが繰り広げられた。春の2冠馬ドゥラメンテのリタイアは大きいが、無論それだけではない。ジェンティルドンナ、ジャスタウェイ、エピファネイアといった花形役者が、こぞって引退。その華やかなイメージが強い分だけ、今年は妙に物足りなさが残る。言ってみれば、スターの待望感、それが年末の阪神JFで当方の心に噴出したのかもしれない。
その一方、海を隔てた向こうでは、随分とにぎやかな週末が待っているようだ。その証拠に、東スポ特派員・荒井記者の浮かれ気分が2週前から止まらない。そう、今年も香港国際レースには日本から総勢10頭の精鋭が参戦する。
「移動距離、検疫も含めて馬にかかるストレスが少ない。加えて気候は温暖だしね。それが香港の魅力かなぁ」
荒井クンの都合はさておき、馬の都合をこう語ったのはダノンプラチナを香港マイルに出走させる国枝栄調教師。続けて「モーリスが日本の大将だけど、この馬もさらに動きが良くなっているから本当に楽しみ」とも。表情は日本のGIと、ひと味違うノンプレッシャーで希望に満ちている。
香港スプリントにサクラゴスペルを送り出す尾関知人調教師も“一発”の期待を口にする一人。「今年の香港は短距離のレベルが高くないから色気を持てる。実際、ゴスペルが2着(スプリンターズS)した日本のレベルがどうかと突っ込まれると困るけど(笑い)」。自虐ネタを交えつつも「香港は一度走らせてみたかった場所。到着後のカイ食いがカギだけど、馬場適性はあると思う」とキッパリ。来年の競馬を盛り上げるスターホースの誕生は海の向こうで期待しよう。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)