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オリンポスに栄冠

  • 2004年07月12日(月) 21時32分
 7月8日、大井「ジャパンダートダービー」。カフェオリンポスが見事な差し切りで3歳ダートの頂点に昇りつめた。初コースながら道中好位でスムーズな折り合い。直線あと1ハロン、アジュディミツオー以下、先行馬が叩き合う外を、それこそ矢のような瞬発力で突き抜けている。自身の上がり3F推定37秒0。2000m2分04秒5は、一昨年ゴールドアリュール(04秒1)に次ぐレース史上No.2。前開催古馬G1帝王賞が04秒0だから、気持ち軽い馬場を割り引いても3歳馬としては上々だろう。

 2着は激しい競り合いの中、最後もうひと伸びしたアクイレジア。ゴール際インから迫ったキョウエイプライドは3着。逃げたアジュディミツオーは1000m通過61秒1(東京ダービー61秒3)、息の入らない展開で4着に失速。期待したベルモントストームは道中2番手を手応えよく進んだものの、追われて意外な甘さを出した。名古屋優駿の覇者タカラアジュディは好位追走からジリ下がり。2歳王者アドマイヤホープも、体調がまだ伴わないか先行態勢からあっさりバテた。

 ジャパンダートダービー(サラ3歳 定量 交流G1 2000m良)

 (1)カフェオリンポス  (56・柴田善) 2分04秒5
▲(2)アクイレジア    (54・松永幹) 3
△(3)キョウエイプライド (56・的場文) 1/2
○(4)アジュディミツオー (56・佐藤隆) クビ
△(5)トキノコジロー   (56・山田信) クビ
………………………………………
◎(6)ベルモントストーム (56・石崎隆)
△(8)ステルスライン   (56・桑島)
△(9)タカラアジュディ  (56・丸野)
 (14)アドマイヤホープ  (56・安藤勝)

 単560円 馬複1690円 馬単3280円
 3連複6970円 3連単34240円

 見当外れの予想に終わったレースは、その回顧が正直辛い。バッタリきたアジュディミツオー、いっこうに伸びないベルモントストーム。実際競馬場ではゴールの瞬間、なにやら脱力感すら覚えてしまった。がしかし、その夜帰宅してもう一度ビデオを回し、通過ラップ、時計うんぬんを洗い直すと、そこは負け慣れて変わり身が早い競馬記者のこと、にわかに“現実受け入れモード”へ入ってくる。結論はカフェオリンポスが強い。それをまるで見抜けなかった自分の眼がフシ穴だった。なるほど流れ、位置取りも理想的に運んだが、直線自信満々に外へ出し、最後3馬身差は力の違い。改めて戦歴をふり返れば、JRAダート[3-2-0-1]、オープン=ヒヤシンスSを完勝している。記者が今回軽くみた理由は、前走ユニコーンSの内容に中身がないと思えたこと、Gone West→Mr.Prospectorと遡る血筋に非力さを懸念したこと。終わってみればよけいなお世話というしかない。脱帽の強さである。

 ただし競走馬の力関係とは、やはり微妙で複雑。そういう想いは変わらない。例えば前走ユニコーンSでオリンポスを負かしたトップオブワールド以下が、ここで同じ芸当ができたかとなると、それはまた首をひねる。JRA全体のレベルといえば、メテオバースト(弥生賞3着)を、兵庫CS、名古屋優駿、2度に渡って退けたタカラアジュディ、その9着が一面現実でもあるだろう。「初コース、距離、ナイター、少しずつ不安はあったが、(パドックで)乗った瞬間、いいなと思った。イメージ通りにレースが運び、持ち前の瞬発力が100%生きました」(柴田善騎手)。個人的には、オリンポスはスターキングマンによく似たタイプとイメージした。短〜マイラーにみえながら、実はパワー兼備、追ってからも味がある。いずれにせよ同馬は、今後南関一線クラスにとって格好の目標、指標という立場になるのだろう。ホームコースで3馬身差。高いハードルを与えらえた南関勢は、これを奮起剤、引き金にするしかない。

 その南関東勢。アジュディミツオーは2000m2分05秒2、現実に東京ダービーと同じ時計で走っている。それで4着。ごく冷静には逃げ馬の宿命というべきか。マークされ早めに並ばれたとき、そこからあと一歩の脚が課題だ。ベルモントストームの場合は、思いたくない、いいたくないことだが、今回に限ると“買いかぶり”が正直かもしれない。あまりにも鮮烈だった京浜盃の差し切り。成長途上、まだ未知数の3歳馬に、どうやら惚れこみすぎてしまったようだ。「いい位置をいい手応えで進めたけどね。もっと強い馬にしていかないと…」(石崎隆之騎手)。彼らしい素朴なコメントだが、記者などにはその心中が痛いほどよくわかる(ような気がする)。4頭出走アジュディケーティング産駒では、結局キョウエイプライドが最も納得のいく競馬をした。勝ち馬より少し前でレースを進め、ゴール際思い切ったイン強襲。「これだけうまく乗れて3着なら仕方ない」。的場文騎手もまた、彼らしいストレートなコメントでふり返った。タフでしたたか、レース上手。しかし常に地味な役回りで、なかなか勝ち運がついてこない。

 それぞれの夏と秋。アジュディミツオー、ベルモントストームはしばらく充電。9月20日「ダービーグランプリ」(盛岡交流G1、2000m)をめざして調整される。一方キョウエイプライドは8月4日「黒潮盃」(大井、2000m)に出走予定。何とか一つタイトルがほしいということだろう。牡馬相手にメドがついたロジータの娘・アクイレジアも、状態を見つつ盛岡照準。レギュラーメンバーしかり、カネツフルーヴしかり、この一族の地方ダート適性はつくづく凄い。ともあれ今回の結果で、3歳馬ダートの勢力図、そして頂点がはっきりした。追いつけ追い越せ、その目標はカフェオリンポス。新たな展開、ドラマがやはり楽しみではある。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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