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しらさぎ賞展望&羽田盃回顧&東京プリンセス賞回顧

  • 2014年04月29日(火) 18時00分


◆しらさぎ賞展望
(4月30日 浦和 サラ3歳以上牝馬 別定 南関東SIII 1400m)

 「しらさぎ賞」は平成19年、条件が一新されたリニューアル重賞。今年8年目だからイメージと存在感、さらにその傾向もほぼ固まってきたといえるだろう。いささか古い話になるが、かつて6〜7月、“3歳・1900m”、クラシック余韻が冷めやらぬ中、ある意味“総決算”として行なわれていた時代も、記者などには印象深い。例えば昭和59年、浦和初の東京ダービー馬、キングハイセイコーの凱旋出走(5馬身差圧勝)。父をほうふつとさせる黒鹿毛の巨漢で、レースぶりもダイナミックな徹底先行。最も“ハイセイコー的”な馬だったと、いま改めてふり返る。

 ともあれ現行“3歳以上牝馬・1400m”。過去7年、レースの特徴は実力馬にきわめて有利な“別定重量”であったことだ。A級=55キロ、B級=53キロ、そこに南関東重賞勝ち1キロ、交流G勝ち2キロが加えられるだけだから、どれほど抜けた実績を持っていようとリミット57キロで出走できた。実際、23年ザッハーマイン(単1.3倍)、24年クラーベセクレタ(1.0倍)は風評通り圧勝劇。クラーペが思わぬポカという昨年も、結局2番人気ナターレ(56キロ)の逃げ切りで、実績上位馬有利…の伝統はひとまず守られている。ただ今年は正直難しい。エミーズパラダイス、レッドクラウディア、ひとまず格上と判断できる2頭が一進一退。加えて斤量規定が微妙に変わった。A1=56キロ、A2=54キロ、B級=52キロ。結果、最重量レッドクラウディア58キロ、最軽量マイネエレーナ、ショコラヴェリーヌなど52キロ。この6キロ差があれば、今回出走12頭、大半に脈が出てくる。当日の気配、オッズなど含め柔軟な推理が必要だろう。もっともどれが上位人気に推されるか。そのこと自体が読みにくい。

 (1)…波乱含み。1番人気=2、1、6、8、1、1、9着、2番人気=3、2、1、1、9、5、1着、3番人気=1、7、9、3、6、6、4着。実績の違う女傑級が順当に勝った年でも2〜3着は微妙に狂う。ただ前述通り今年は人気自体が読みづらい。

 (2)…船橋優勢。船橋=5勝、2着4回、3着6回。過去7年中ワンツースリーが3度ある。ただ昨年はナターレ→センゲンコスモ、川崎所属馬の1、2着で、流れが変わる可能性もないではない。地元浦和も1勝、2着2回とまずまず健闘。

 (3)…5〜6歳。6歳=3勝、2着3回、5歳=3勝、2着2回とほぼ互角。4歳馬は案外分が悪く、一昨年クラーベセクレタが勝っただけ(2着2回)。ここで初タイトルを獲得したケースも少なくないが、その4頭はすべて直前1〜2着の上昇馬。

 (4)…捲り注目。逃げ=2、先行=5、差し=7、追込=2。前半好位〜中団で折り合い、3〜4コーナー一気に捲るパターンが最も多い。注目ジョッキーは的場文男騎手。ザッハーマイン、ナターレで2勝、トーセントップランで2着1回。

 ※データ推奨馬
 ◎マイネエレーナ…イメージ以上に健闘、好走例が多い浦和所属。現実に同馬の場合、浦和1400〜1500m[3-1-0-0]、昨暮れ転入後、文字通り本格化している。父ロージズインメイ、捲り気味に動けるタイプ。小久保厩舎は22年ジョーイロンデルで優勝。

       ☆       ☆

 ◎ビタースウィート   57佐藤博
 ○マイネエレーナ    52坂井
 ▲ケンブリッジナイス  54張田京
 △エミーズパラダイス  57川島
 △ショコラヴェリーヌ  52的場文
 △レッドクラウディア  58森
 △ミヤサンキューティ  57吉原
  ハードデイズナイト  57山崎誠
  キモンレッド     56真島
  ラブリリック     52今野

 ビタースウィートを狙う。昨秋JRA→大井転入、いきなり3連勝を飾った上昇馬。一貫末脚勝負、まさしく“弾ける”というレースぶりで、とりわけ狭いインを一瞬のうちに突き抜けた「シンデレラマイル=SIII」は、精神面の逞しさも合わせ出色の内容だった。JRA3勝ながら、距離適性、好走パターン、ややつかみどころのないイメージだったが、この結果が出てしまえばおそらく1400〜1600mベストだろう。父アフリートアレックスは米GI3勝(内1つがダート7F)のスーパーホース。ビター自身7歳でも、まだまだ成長力が期待できる。前2走5、8着も中〜長距離の交流Gを思えば悪くない。左回りは中京で1勝している。

 マイネエレーナも同様に南関東転入で本格化した。JRA在籍時の交流勝ちも含め、浦和1400m2戦2勝。ことごとく好位から自然流に捲る形で、瞬発力、センスとも素晴らしい。今回初重賞挑戦だが、反面軽量52キロの味方がある。ショコラヴェリーヌ、ケンブリッジナイスは前哨戦「プリムラ賞」を1、2着。ともに好調さ、1400m適性には胸が張れ、前者52キロ、後者54キロ、斤量面も恵まれている。2頭の比較は、自在性、安定性でケンブリッジを上位にとったが、ショコラの場合、前述通り的場文Jの手綱に魅力がある。

 逃げ、先行型がとにかくそろった。中で一枚格上はクラシック実績、交流G実績があるエミーズパラダイスだが、前述ショコラに加え、ラブリリック、キモンレッド、さらにレッドクラウディアも前へ前への気性だけに、はたしてどれが生き残るか。エミーズ、レッドは斤量面で微妙に不利という感もある。むしろ当日のオッズ、そう人気にならないようならミヤサンキューティ。持病のノド鳴りが大成を阻んでいるが、過去「優駿スプリント」「シンデレラマイル」重賞2勝のスピード能力。今回吉原寛人J、あえて起用(スポット参戦)にも、勝負気配が浮かんでくる。

◆羽田盃回顧
(4月23日 大井 サラ3歳 定量56キロ 南関東SI 1800m梢重)

 ○(1)ハッピースプリント   1分52秒6
 △(2)ドバイエキスプレス     5
 ◎(3)ドラゴンエアル       3/4
  (4)キットピーク        1
 △(5)パンパカパーティ      鼻
 ………………
 △(6)スマイルピース       
 △(7)ファイヤープリンス
  (8)ロケットボール
 ▲(9)ブラックヘブン

  単110円  馬複450円  馬単500円  3連複550円  3連単1180円

 ハッピースプリントが圧勝した。終わってみれば文字通り横綱相撲。道中素晴らしい手応えで3番手を進み、直線あと1ハロン、GOサインと同時に別格の脚を使った。1800m=1分52秒6(上がり37秒4)。前日古馬A級ムサシキングオー=53秒3との比較から、時計的にも十分胸が張れるだろう。「(パドックで)乗った瞬間、大丈夫と確信した。道中の反応も終いの伸びも前走(京浜盃)以上。今日は次(東京ダービー)への通過点と感じています」(吉原騎手)。唯一未知数、不透明だった距離延長時の折り合い、スタミナも今回一挙にクリアした。順風満帆…という以外に言葉がない。

 この夜パドックの同馬をもう1度じっくり見た。520キロ超、巨漢に属するのは確かだが、前駆と後躯、偏りなくバランスがとれ、何より馬体も歩様も柔らかで“懐が深い”印象がある。加速がついて重心が沈み込む、豪快かつ理想的な脚さばきも、おそらくそれだからこそ…だろう。「前走より安心して見ていられた。強い馬。この状態が維持できれば次も結果がついてくる」(森下淳平調教師)。「ちょっといない馬ですよ…」。昨暮れ「全日本2歳優駿」制覇直後、田中淳師(道営)のコメントを改めて思い出す。東京ダービーはもちろん、続く交流GI「ジャパンダートダービー」にも夢がつながる。

 ドバイエキスプレス2着。中団からソツなくレースを進め、直線馬場の真ん中を力強く伸びてきた。注目の昇り馬ながら現実に初重賞。父デュランダルは守備範囲が広いと納得する。記者◎ドラゴンエアル3着。上がり37秒8(勝者=37秒4)、京浜盃同様の大外強襲だから内容は悪くない。総合力と完成度。現時点でハッピースプリントに譲ることははっきりしたが、この日さらに6キロ増、いわゆるフィジカル面は着実に成長している。1F延長のダービー、可能性は十分残した。キットピーク、パンパカパーティが前々を動いて入着確保。ただこの2頭は元より詰めの甘さに課題があり、今後距離延長で正直プラスが浮かばない。成長株スマイルピースは3〜4コーナー追い上げて見せ場を作り、次走いよいよ試金石か。ブラックヘブンも潜在能力からはもう少し走っていい馬だ。

◆東京プリンセス賞回顧
(4月24日 大井 サラ3歳牝馬 定量54キロ 南関東SI 1800m良)

  (1)スマートバベル    1分55秒0 
 ▲(2)ノットオーソリティ   11/4  
  (3)イエスアイキャン     3/4
  △(4)マリアンズクック     首
  ◎(5)ブルーセレブ       鼻
  ………………… 
  △(6)クライリング
  ○(12)テイクユアチョイス 
  △(13)アッリヴァーレ
  △(16)シャークファング

   単2560円  馬複4970円  馬単16410円  3連複18990円  3連単163230円

 伏兵スマートバベルがインから鮮やかに差し切った。好スタートをスムーズに下げて4番手。道中終始内ラチ沿い、一分の隙もなくレースを進め、直線外から仕掛けたクライリング、ノットオーソリティ、それをひと呼吸待つ形で末脚を爆発させた。「いい枠(1番)をもらったからじっくりタメて直線勝負。先生(川島一調教師)と話した通り乗れました。どっしり落ちつきがあり、気持ちの面で強い馬」(澤田龍哉騎手)。確かに同馬は初コース、初ナイター、初重賞。この結果が出れば100点満点といえるだろう。ただ今日の場合、クラシック初騎乗、澤田Jの冷静さと勝負勘がおそらく大きい。デビュー6年目、通算180勝。先輩、同輩の層が厚い南関東(ことに船橋)だが、今回勝利は彼自身一つエポックになる可能性もある。

 スマートバベルは、サウスヴィグラス×ジェイドロバリー。デビューから[2-4-0-1]は優秀だが、強敵相手の実績となると正直乏しく、今回手探り、力試しという評価だった。改めて示したのは競馬センスと勝負強さ。1000m通過63秒2、典型的な先行馬ペースを最後の最後まで我慢した。「いい脚は持っている。それを1800mで使えるかどうか。鞍上が上手に乗った。今後選択肢が広がった点が何より大きい」(川島正一調教師)。1800m=1分55秒0はどうにも平凡(前日羽田盃=ハッピースプリント52秒6)、人気馬不完全燃焼だったうらみはあるが、反面、澤田=スマートバベル自体はまだまだ伸びしろを残している。

 ノットオーソリティ2着。前2走同様スタートひと息、道中外目を追い上げロスの多い競馬になった。それでも直線あと1Fは突き抜ける感触があり、この形で最後失速は納得しがたい。前走ユングフラウ賞時より8キロ減。絶対能力はさておき体調自体が8〜9分ということだろう。大外強襲イエスアイキャン、マリアンズクックが3、4着。ともに鋭い末脚を持った個性派だが、反面不器用さも同居して常識にかからない。今後統一Gで好勝負となると、スピード面の進境も必須になる。◎ブルーセレブは、中団キープから直線に賭けるいつものパターン。上がり38秒9、数字上は勝ち馬と互角だが、終い1Fは昨暮れ東京2歳優駿牝馬(SI)ほど切れなかった。同馬の場合、あるいはベスト1600mかもしれない。クライリングはカカリ気味の先行策で終い失速。テイクユアチョイスも道中後手後手に回る展開で桜花賞(3着)ほど走れなかった。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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