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“名牝”続出の時代に“強い男”の出現も見たい/吉田竜作マル秘週報

  • 2015年12月16日(水) 18時00分


笹田調教師「距離がどうこうというレベルの馬じゃない」

 ジャパンC(ショウナンパンドラ)→チャンピオンズC(サンビスタ)と続いた両国際ビッグマッチを牝馬が制した。ウオッカがダービーを制した2007年あたりから、“歴史的名牝”が絶え間なく出現するため、最近はあまり衝撃的に伝えられなくなってきたが、ひと昔前を知っている世代としては、当然のことのように受け取られることこそが衝撃的だ。

 先日、スポーツ庁が発表した15年度の「全国体力調査」で女子の小中学生の体力が過去最高を記録したという。3歳クラシックのシーズンは人に例えると、中学から高校生あたりに近いとも言われる。馬と人の世界はリンクしているのか?

 いずれにせよ、ウオッカ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナといった名牝が続々誕生したことで「牝馬も手をかければ牡馬と変わらない賞金を稼げる」との考え方がサークル内では一般化した。育成の段階から期待を持って育てられることは、牝馬にとって好循環を生んでいるように思える。

 記者がこの世界に入った20年前といえば、「2歳の牝馬は繊細だし、うるさいし、それでいて怒れないし」と敬遠する厩務員や調教師が少なからずいたものだが…。今では「小さいうちはむしろ牝馬の方が扱いやすい」と口にする厩舎関係者もいるほどだから、生産、育成段階から牝馬の扱いが良くなったのだろう。トレセンで記者が体感するだけでも、いわゆる「うるさい牝馬」は大きく減った。パドックを見ていて、それを実感するファンも少なくはないはずだ。

 ベガ、ブエナビスタ、ハープスターなどを送り出した“牝馬マイスター”の松田博調教師の言葉を借りれば「牝馬は子供を産む大事な仕事がある。自分の体と子供を守らないといけないから、早くに完成するんだ」。

 以前にあった考えが改められたことで、もともと牝馬が持っていた「早熟性」がよりいい形で引き出された。それが近年の牝馬の活躍につながっているのかもしれない。

 先週の2歳女王決定戦はメジャーエンブレムが快勝。今週は同じ舞台で朝日杯FSが行われる。昨年から枠順の有利、不利の差が大きいとされる中山マイルから、大きな差のない阪神マイルへと舞台変更されたのは、関係者にとってはもちろん歓迎材料なのだろうが…。最終週には中山で“仮想・皐月賞”となるGIIホープフルS(27日=芝内2000メートル)が行われる。牡馬と牝馬の力差が小さくなった現在。わざわざ同じ舞台で2週続けて2歳GIを行うことには首をかしげざるを得ない。性別差の出にくい2歳のうちはマイルGIと中距離GIに分け、牝馬限定戦をなくすのも手だとは思うのだが…。

「強い牝馬ばかりではいい種牡馬が出なくなるので、それはそれで困る」(松田博調教師)といった声もある。牡馬にとっては「牝馬は牝馬同士で」走ってくれる方がありがたい? いやいや、今年の朝日杯FSで主役を張るエアスピネルはそんな“小さな男”ではなかろう。

「これでマイルを3回続けて使うことになるけど、距離がどうこうというレベルの馬じゃない。クラシック路線に乗せなきゃいけない」と笹田調教師。朝日杯FSはエアスピネルの勝ち方に注目している。

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