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長距離での適性を見せたアムールブリエ/名古屋グランプリ

  • 2015年12月24日(木) 18時00分


サンビスタを競り落としたのも納得

 人気は中央馬のみ、地方馬はすべて単勝万馬券、というのは、地方のダートグレードではたまにあることだが、これほど極端に二分されることも珍しい。中央5頭の単勝がすべて一桁で、地方馬は200倍以上。フルゲートになったとはいえ頭数合わせの感は否めない。

 時期的に東京大賞典の裏番組だが、それでもやはり中央勢の層は厚い。特にこのダート長距離戦はメンバーが固定化していて、エーシンモアオバーは今年で5年連続、ニホンピロアワーズは3度めの出走で、ともに勝利経験があり、2頭ともこれが引退レースと伝えられての出走だった。ソリタリーキングも昨年に続いての出走で、この3頭がベテラン勢。これに若い4歳のカゼノコとアムールブリエというメンバー。

 2012年には金沢から遠征のナムラダイキチが単勝2番人気に支持されたことがあったが、それでも勝ち馬(エーシンモアオバー)からは2秒以上も離されての4着。地方馬の馬券圏内は2007年に3着に入ったチャンストウライ(兵庫)が最後。ゆったりとしたペースの縦長でレースが進むため、レースにまぎれがないのだろう。

 今回も2周目の向正面でペースが上ったところから地方馬は完全に置かれ、中央5頭の勝負となった。

 スタートからすんなりハナに立ったのはエーシンモアオバーで、競りかけてくる馬もなく見るからにスローペース。昨年までの4年間で2勝、2着1回という成績を残しているエーシンモアオバーとはいえ、スタートから最後の4コーナーを迎えるまで先頭だったのは過去に2011年だけで、いつも楽に逃げさせてもらっていたわけではない。それが今回、まったくのスローの逃げに持ち込めたにもかかわらず、4コーナー手前で一杯になってしまったのは、引退レースゆえ目一杯に仕上げられていたわけではなかったのだろう。

 4コーナー手前で先頭に立ったのは、2番手を追走してきたニホンピロアワーズ。しかしその直後を追走していたアムールブリエの浜中騎手が自分の股の間からうしろを確認したところで、すでに相手はニホンピロアワーズでないことがわかった。直線を向いたところで、今度は外からうしろを確認。さらに残り100mのあたりでもう一度股の間から後ろを見た。差してくる可能性があるのはカゼノコとソリタリーキングだけ。2頭は競り合っていたものの、差を詰めてくるほどではないことを確認すると、浜中騎手は追うのをやめた。結果、2着のニホンピロアワーズには1馬身差だが、まったくの楽勝だった。

 JBCレディスクラシック(4着)のあと、浜中騎手が「距離はもっと長いほうがいい」と話していたように、1800mはこの馬には忙しかった。それを思えば、1200m通過が1分16秒8、勝ちタイムが2分8秒1だったという門別2000mのブリーダーズゴールドCで、あのサンビスタを競り落としたというのも納得できる。今後は、川崎記念(川崎2100m)、牝馬同士のエンプレス杯(川崎2100m)、ダイオライト記念(船橋2400m)あたりが選択肢になるのではないだろうか。

 アムールブリエには遊ばれる感じになったとはいえ、ニホンピロアワーズの2着は、GI馬の意地を見せた。一方で期待の4歳馬カゼノコは前を脅かすまでには至らず、ようやくソリタリーキングとの3着争いを制したまで。まったくのスローペースで前の馬たちも十分に脚を溜めているという状況で、後ろから追いかけるという展開では厳しかった。前走みやこSが先行勢には厳しい流れとなり、4コーナーではほとんど最後方に近い位置から追い込んで際どい2着と見せ場をつくったが、脚の使いどころが難しい馬なのだろう。

 中央馬にはこれで引退という馬が2頭いたということもあるが、描いていたとおりのレースができたであろう、アムールブリエのみに収穫があったレースだった。

 ひとつ上のアウォーディーがダートに転向してシリウスSで強い勝ち方を見せ、2歳のラニもダートで2連勝。天皇賞馬の母がアメリカから送り出している一族のダートでの活躍は興味深い。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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