中舘師のヒントから考察 ノンステッキ馬券さっそく今週2頭/トレセン発秘話
◆実際は着差以上の完勝
年明け11日のGIIIフェアリーS(ビービーバーレル)で、開業2年目にして重賞初制覇を遂げた中舘英二調教師。それはまさに現役ジョッキー時代をほうふつさせる鮮やかな逃走劇であったが、翌週の美浦ではさらに興味深い話でそのメモリアルVを振り返った。
「見ているオレにすれば、いつ差されるかと直線ヒヤヒヤだったけどね。上がってきたジョッキー(石橋)は“いや、結構余裕がありましたよ”と涼しい顔。そこで冷静になってパトロールビデオを見て“なるほどね”と思ったんだ」
2着ダイワドレッサーとは1馬身3/4差。しかし実際はその着差以上の完勝だった、というのが陣営の見解だ。果たしてその根拠は?指揮官が独特の視点でさっそく解説してくれた。
「オレもジョッキーをやっていたから分かるんだけどさ。馬が苦しくなると乗り役は着差にかかわらずステッキを2、3発入れたくなる。それが騎手心理ってもんなんだ。ただ、あのレースで(石橋)シュウはゴールまでそんなアクションは見せなかった。なるほどメイチじゃなかったなと、その時に気付かされた」
レース後、取材に検量室へ下りると、まれに騎手が「ノンステッキ、ノンステッキ!」と自慢げに報告する場面に遭遇することがある。今までは漠然と“余裕があったのか”と想像していたのだが、実際の言葉の重みはそれ以上。「とても負ける気がしなかった」という含みが、そこに隠されていることを初めて知った次第だ。ならばゴール前の騎手のアクションを馬の強さの尺度にする――そんな馬券作戦も時には有効なのかもしれない。
そこで今週は特別登録の2頭に注目してみた。一頭は土曜(23日)の3歳500万下・若竹賞(中山芝内1800メートル)と、3歳オープン・若駒S(京都芝内2000メートル)にダブル登録のロワアブソリュー。新馬戦はラスト1ハロン標識で気を抜かせないためにステッキが入ったが、その後はノーアクション。スローながらも展開利と言わせぬ脚力をゴール前で示した。
もう一頭は9日中山の古馬500万下を4馬身差で完勝したエメラルエナジー。こちらはまさしくノンステッキの逃げ切り勝ち。昇級初戦(日曜・初茜賞=中山ダ1800メートル)もハンデ戦なら互角以上にやれるはず。ノンアルコールはうまくも何ともないが、ノンステッキは美味であることを証明していただこう。