◆もし前日発売中止がアメリカJCCでなく東海Sであったなら…
大寒波が日本列島を襲った先週末、降雪の開催への影響を懸念してGII・アメリカJCCの前日発売が取りやめとなる事態が発生した。同レースの売り上げは前年比84.3%。前日発売の重要性(ファン及び主催者にとって)はその数字上からも十分理解できるものだが…。通常通り、前日発売したGII東海Sで発生したアクシデントが、その功罪を再考させる材料になったのだから皮肉である。
「事件」は日曜の朝イチ、中京1R(3歳未勝利・牝)で起こった。1番人気のマーキークラブが4角で外に逸走。外ラチに勢いよくぶつかり転倒し、騎乗していた浜中俊は落馬負傷によりその後のすべてのレースで乗り替わりに。最大の問題は、同騎手が同日メーンの東海Sで1番人気ロワジャルダンに騎乗予定だったことに尽きる。
間もなく横山和生への騎手変更が発表されたが、もし前日発売中止がアメリカJCCでなく東海Sであったなら…。アクシデントが1Rでの出来事だけに、大半のファンが乗り替わりを知ったうえで馬券を購入したと推測できる。もっとも浜中が無事なら結果(3着)が違ったとは言えないし、負傷による騎手変更も珍しいことではない。ただ、馬より騎手で馬券を買うファンが少なくないのは事実。肝心なのは、お客が納得して“商品”を購入したか否かだろう。
おそらく主催者はもろもろのアクシデントを含めてすべてがバクチ、という認識なのだろう。残念ながら馬券にはクーリングオフ制度がない。塗り間違えが茶飯事の当方など、痛恨の思い出も一つや二つではないが、それはともかくとして…ファンの心情に即さない商品(馬券)を“売りっぱなし”というスタンスには少々疑問を感じる。
むろんファンにとってもメリットのある前日発売そのものを否定する意図はない。むしろそのリスクさえ軽減できれば、これを有効活用するファンがさらに増えるのではないか、という思いが当方にはある。フトコロ具合も大寒波となった先週末、そんなことをふと考えた次第である。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)