エイシンティンクルに待ち受ける最後の難関/吉田竜作マル秘週報
10日の坂路で手綱を取った坂口助手は「走りますよ」とキッパリ
3歳クラシック戦線の勢力図があらかた見えてきた。あまり好ましくない言い方になるが、そろそろPOGでも「勝ち組」「負け組」の差が…。
記者が推奨していたハープスターの半妹リュラは昨秋の未勝利戦6着後、一旦は放牧から帰ってきたものの、脚をひねったか何かで気にするしぐさを見せたため、再びノーザンファームしがらきへUターン。「おとなしくなってきたし、攻めもいい方に向いていただけに残念だが…。まあ次のキュウ舎で走ってくれればいいさ」と松田博調教師も少し寂しそう。ともあれ、このリュラの絡みで「負け組」の片棒を担いでしまったとするなら申し訳ない限り。恐らく、記者の持つ“負”のパワーが足を引っ張ってしまったのではないかと…。
何度か当コラムでも触れている通り、現時点で未勝利、未デビュー馬は基本的にノーチャンスだろう。オークスを制したカワカミプリンセス(2月26日デビュー)の例もあるが、これは例外中の例外。デビューから約3か月でクラシックを勝つなど、これまでも、これからもポンポンと出てくる事例ではない…と頭では分かっているが、それでも期待したくなるのが人のさがか。その動向を追い続けてきたエイシンティンクル(牝=父ディープインパクト、母キャタリナ・坂口)にはまだ記者も望みを持っている。
ゲート試験合格の翌週4日に行われた坂路併せ馬で4ハロン54.1-12.7秒をマーク。「来週はもう少しやらないと間に合わない」と坂口調教師が口にして臨んだ10日の坂路では51.7-12.7秒と一気に全体時計を短縮してみせた。手綱を取った坂口助手は「走りますよ」とキッパリ。彼を知る人間なら、ここまで強く言い切ったことに驚きを隠せないはずだ。
坂口助手がスタッフとして実父のキュウ舎に入った時には、すでに“2歳戦なら坂口キュウ舎”と呼ばれた時期を過ぎ、なだらかに坂道を下り始めたころ。坂口助手の口調が慎重になることが多かったのはそういった側面もあったかと思う。それだけに期待を隠そうともしないエイシンティンクル評には面食らった。
「トモもしっかりしてきたし、今のところ気性も大丈夫。お兄さん(エイシンヒカリ)も普段はおとなしいですけどね。ただゲートがこちらは速くないので、ハナに行けるとは思わない。恐らくはヒカリと違う形でレースを運ぶことになるのでは。まあ、普通の(控える)競馬ができる馬だと思ってますから」
エイシンティンクルにとって、これから最後の難関が待ち受けている。それが思うようなレースに使えないという点だ。
「今週の東京(日曜芝1800メートル)か小倉(土曜芝2000メートル)に投票するかも」とは坂口調教師だが、除外による優先出走権がない馬にとってはどちらも狭き門となる。「除外濃厚の馬を(武)ユタカに頼むのも気が引けるし、そうかといって入ってしまった場合に誰でもいいという馬でもない。小倉に出馬投票することになったら誰にするか…」と坂口調教師も思案顔。エイシンティンクルは果たして誰を背に、いつ、どこでターフに姿を見せてくれることになるのだろうか。