◆「最も得意の中山千八で下手な競馬はできない」
覚醒剤所持における清原和博容疑者逮捕から3週間が経過し、薬物遍歴にまつわるもろもろの情報が世間をにぎわせている。現時点でその真偽は不明だが、当方にすれば王貞治氏が持つ本塁打記録(868本)も意識させたスーパースター。有り余る才能を秘めながら、いつしか野球が目的から手段にすり替わった。それが返す返すも残念でならない。
さて、最終的に素質より強い意志が勝るのは競馬も同じ。2週前の共同通信杯もそんな一例ではなかったか。主役はGIIホープフルSを完勝し、クラシック有力候補と目されたハートレー。単オッズ1.9倍の断然人気を集めたが…。結果はブービー9着と惨敗した。“容疑者”と同じ扱いは失礼だが、賞金が足りているハートレーにしてもここはGIへのステップであり、目的でなくいわば手段。「精神的に自分からやめる危うさも内包している」と担当の中條亮英助手は以前に語ったが、前走に関しては送り出す側の心の隙が馬に伝わっての凡走ではなかったか。
ゆえに今週も気になるのは、GII中山記念における3世代の皐月賞優勝馬の立ち位置である。
ドゥラメンテはドバイ・シーマクラシック(GI、メイダン芝2410メートル)、イスラボニータ、ロゴタイプは豪州・クイーンエリザベスS(GI、ロイヤルランドウィック芝2000メートル)を視野に入れての始動戦。馬券的には素材より意志の確認が最重要テーマだが、参考としたいのはステラウインドを登録する尾関知人調教師のこんな声だ。
「次走にドバイの長距離戦(ゴールドカップ=芝3200メートル)も視野にある。それを踏まえて、今週の中山記念、3月9日のダイオライト記念(船橋ダ2400メートル)、3週後の阪神大賞典(阪神芝内3000メートル)のいずれかを選択することになるだろう」
この視点を尺度にすれば、登録のある皐月賞馬3頭の立ち位置もおのずと浮かび上がろう。おそらく今回、走りの密度をより求めたいのは、次走に近い距離を走るイスラボニータ、ロゴタイプ。これは揺るぎない事実だろう。
「過去のタイトル(皐月賞)うんぬんでなく大事なのは今。昨シーズンは出足から馬場(稍重)も悪くつまずいてしまったが、今年は好発進を」と意気込むイスラ=栗田博憲調教師。「最も得意の中山千八で下手な競馬はできない」と決意を示すのはロゴ=佐々木悟助手。日曜中山メーンは2冠馬ドゥラメンテでなく、この両馬いずれかを本命にするつもりでいる。(美浦の宴会野郎・山村隆司)