ファビラス陣営が練るエンブレム逆転プラン/トレセン発秘話
◆「体形的にもまだ成長する馬」
今週は中山でGII弥生賞、阪神でGIIIチューリップ賞と、牡牝注目のトライアルが行われる。古馬GIのステップレースと違い、クラシックトライアルは一生に一度きり。レース後の検量室で毎年泣き笑いが交錯するのも、この舞台こそ夢への懸け橋であるからにほかならない。
もっとも“本番切符”の取り方が様々となった今は、トライアル軽視の風潮がなきにしもあらず。昨年の2冠馬ドゥラメンテが代表する通り、GIII共同通信杯からの直行も堂々たる路線の一つで、早めの賞金加算が有利なのも事実だろう。しかし、である。昨年きさらぎ賞から駒を進めたルージュバックが1番人気の桜花賞で9着に沈んだのは記憶に新しい。支流はあくまで支流であり、本流をナメると痛い目に遭う。そんな教訓を生かすなら、本番に向けてより注目すべきは桜花賞TR=チューリップ賞かもしれない。
「GIIIクイーンCでは再び勝ち馬(メジャーエンブレム)が抜け出した感がありましたねぇ。同学年の田村調教師には“そんなに強いのなら牡馬路線に行ってくれ”とお願いしたくらいです(笑い)。だからここでは“その次”の評価がもらえるくらいの競馬を見せたいと思っているんですが」
冗談めかしてこう語るのは、関東から唯一の西下をするウインファビラス=畠山吉宏調教師。ご存じの通り、GI阪神JFでは2馬身差2着。“銀メダリスト”が始動戦を前に改めて女王に敬意を表した形だが、すでに白旗を掲げているかといえばさにあらず。言葉とは裏腹に、逆襲プランを着々と練りこんできた。
「すでに一度経験しているとはいえ、同じコースを走っておくこと、強いメンバーにぶつけていくことのメリットはある。暮れのGIは外枠から出していった分ハミがかかるところがあったが、勝ち馬に離されながらも3着馬には並ばれなかった。ならば、それなりのポジションにいる馬だと思うんです。体形的にもまだ成長する馬。デビューから手綱を取る松岡も、本番につながる競馬をしてくれるはず」
もし女王メジャーエンブレムに死角があるとすれば、トライアルスキップという異色ローテだろう。昨年の桜花賞馬レッツゴードンキ同様、1番人気の隙を突く存在は今年も本流=チューリップ賞から現れるのか。西の“夢への懸け橋”をしっかり観戦したい。(美浦の宴会野郎・山村隆司)