◆外枠馬こそ穴となることも
「馬券は取ったか?」
これは全休明けのトレセンで関係者があいさつ代わりにかけてくる言葉だが、そのパターンは総じて人気薄での好走が多い。おそらく関係者も“ほら見たか”と自らの仕上げに鼻高々なのであろう。今週火曜(15日)も例に漏れず複数の関係者が当方をからかいに来た(?)のだが、中で返答に窮したのは手塚キュウ舎の森信次郎キュウ務員に出会った時だった。
森さんが担当するのは先週アネモネSで2着に好走したアッラサルーテ(14番人気)。先週は何度も「ひと叩きした今回は馬体に実が入りすごくいい」と聞かされていたのだが、何といっても8ハロンの距離は初めて(過去6戦はすべて7ハロン以下)。予想は△評価にとどめ、もし内枠を引いてロスなく運べそうなら馬券も一興と思っていた。
ところがフタを開ければ大外16番枠。枠順発表の時点ですっかり馬券は諦めたのである。ただ、具合の良さを伝えてくれた森さんに対しては、そうも言えず口ごもっていると…。
「まあ馬券は無理だな(笑い)。オレだって枠順を見た瞬間はダメと思ったもの。ただ、終わってみれば逆に外枠が良かったかも。緩ペースとみるや(石橋)シュウが好判断でスッとハナへ。あれは他馬の出方が見える外枠だからこそできた好プレーかもしれない」
「中山マイル=内枠有利」は、競馬を始めれば誰もが間もなく知る“馬券の常識”。ポケットから2角まで距離が短いため、外から位置を取ろうとすれば他のコースよりムダに脚を使わされるからだ(アッラサルーテの単オッズ124.3倍は人気がなさすぎたが)。
それでも森さんの言葉を聞いてふと思い出したのが、同じく中山マイルで行われた昨年暮れのターコイズS。14番枠オツウが超スローで逃げて3着、同様に難なく2番手につけた16番枠シングウィズジョイがV。結果、3連単295万円超の大波乱となった一戦である。
「そんなことあったな。確かに牝馬戦は牡馬のレースよりペースが落ち着きやすい。そうなると動くに動けず内枠がアダになることもあるもんな」と森さん。今や中山マイルの内枠は無条件で馬券が売れる時代。ゆえに展開や馬、騎手のキャラ次第では、外枠馬こそ穴となる(牝馬限定戦ではことさら注意が必要か)。我々夕刊紙記者は枠順発表前に印を打つのが仕事だが、そんな可能性をファンが知っておくのも悪くなかろう。(美浦の宴会野郎・山村隆司)