◆“季節の変わり目”で要警戒の存在
「いや〜、うまくいったよね」
ショウナンアポロン(8番人気)が快勝したGIIIマーチSを振り返り、調教パートナーの大下内隆茂助手(古賀史キュウ舎)が、週明けの美浦でにっこり、ほほ笑んだ。
レースの5ハロン通過は63秒3のスロー。ハナを切った同馬には絶好の展開の独り旅でもあった。しかし心から「最高の結果でした」と喜びを分かち合えないのがつらいところ。実はこの馬、ポルックスS→アルデバランSで◎を打ちながら、肝心の今回は相手強化にひよってミニマムの△評価だったからだ。付け加えれば先週、後輩の“ゆうこりん”こと田幡記者には、「馬は見限った途端に走るから怖い」と能書きをタレた矢先の出来事で…。バカにつける薬はないとは、よくぞ言ったものだ。
もっとも、この伏兵の逃走V、展開の恩恵があったにせよ決して偶然の産物ではない。前出・大下内助手が戦前に「叩いた今回は気温の上昇も手伝い体がスッキリ。走りにも素軽さが出た」と語っていたように、過去になく行きっぷりが良く、すんなりハナを奪えたのが最大の勝因。この春を迎えての小さな変化を見逃すか見逃さないか。それが勝者と敗者の大きな分かれ目だったのである。
ゆえにバカなりに考えてみた。今週重賞にも“季節の変わり目”で要警戒の存在がいることを。一頭はGIIIダービー卿CTのインパルスヒーロー。前走・東風Sは11番人気の低評価をあざ笑う快勝で「いまだ明確な理由は分からないけど、桜の開花宣言の時期だけは決まって走る」と国枝栄調教師が苦笑する“春馬”だ。GIIIファルコンS1着→GI・NHKマイルC2着後は鳴かず飛ばずだった昨年も、2年前の活躍を思い出したかのように東風S→ダービー卿CTと連続3着(12→9番人気)。昨年と据え置きのハンデ56キロなら、今年も前走Vをフロック視するわけにはいくまい。
そしてもう一頭は「今回は放牧での充電がすごくうまくいった。毛ヅヤはピカピカだし、ようやく体もふっくら。このデキなら強敵相手でもヒケは取らない」と斎藤誠調教師が胸を張るGII大阪杯のヌーヴォレコルト。昨シーズンは馬体の線の細さが個人的に気になっていたが、今春はキャシャな少女からまさにグラマラスな熟女へ…。別馬のごとく変貌を遂げた同馬の走りも、楽しみである。(美浦の宴会野郎・山村隆司)