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テンシノキセキの14をめぐる「縁」を感じずにはいられない裏話/吉田竜作マル秘週報

  • 2016年05月11日(水) 18時00分


◆「宮崎の育成の時からずっと見ていたんだ。落札してすぐに橋口先生に電話したよ」

 ブリーズアップセールで取引された2歳馬たちが栗東トレセンに入キュウした。当セール出身馬で記者が最も気になっていたのはテンシノキセキの14(牝=父エンパイアメーカー)の行方だ。

 テンシノキセキは現役時、2000年フェアリーS、03年セントウルSの重賞2勝を含め全9勝と芝短距離路線で活躍。かれんな馬名とともに長く愛されてきた馬だった。

 母となってからはその産駒の多くが現役時の所属先でもあった橋口弘キュウ舎へと入キュウ。母をナマで見ていた一ファンとしては、同じ栗東でその産駒を見られることに喜びを感じていた。

 だが、ご存じの通り、橋口弘キュウ舎は2月いっぱいで解散。これまでテンシノキセキの産駒がセリに出された時は、2頭(ゼロレイテンシ、マチャプチャレ)とも美浦所属になっていたため、その動向が気になって仕方なかった。それだけに先日、栗東の坂路モニターに「母テンシノキセキ 宮本 博」の文字を見つけた時はホッと胸をなで下ろした…と同時に、人との縁を感じずにはいられなかった。

 いわゆる「坂路小屋の住人」の“長老”として長く君臨していたのが橋口弘元調教師だったとすれば、同じ場所に詰めることが多かった宮本調教師はその“一門”にあたる。狭い坂路小屋でこの2人に、音無、須貝両調教師らを加えたメンツで毒舌交じりの冗談が飛び交うシーンは、名物にもなっていただけに、公私ともに仲がいいのは競馬記者の間でも広く知られている。やはり宮本調教師も“長老ゆかりの馬”テンシノキセキの14を狙っていたのではないか?

「予算を2000万円までみてもらっていて。実はシニスターミニスターの子(牝=母チューベローズ)を狙っていたんだ。ところが2000万円を超えてしまってね。それでこっちにしたんだよ」(宮本調教師)

 あれっ、“本命”は他にいた? いやいや、テンシノキセキの14のチェックもやはり早い段階からしていたようだ。

「実は宮崎の育成の時からずっと見ていたんだ。お父さんがエンパイアメーカーだろ。気性の難しい馬が多いから、育成の人たちもすごく丁寧に、気を使って調教していた。セールで(速い)時計が出なかったのは目一杯にやらなかったから。やっていたら時計は出ていただろう。もちろん、落札してすぐに橋口先生に電話したよ」

 あの坂路小屋で培われた絆は今も健在なのを確認できたわけだが、POGコラムとしては目前のドラフトで、このテンシノキセキの14がいるのか、いらないのかをジャッジしなければならない。

「ゲートの中でガタガタしたこともあったが、次の日はもう大丈夫だった。今のところはおとなしい。デビューはいつと決めずに、今はとにかくゲートの練習を入念に進めていくよ。もともと外れの出にくい血統だし、調教をやっていったら、すぐにでも仕上がりそう」

 近くで母、そして兄姉たちを見てきたトレーナーだけに、当然この血統の傾向は頭に入っている。近年のブリーズアップセール出身馬の完成度の高さを加味すれば、「即戦力」として“いる”と判断していいのでは。なじみの深い夏の小倉開催で姿を見ることができれば、橋口弘元調教師も喜んでくれるのではなかろうか。

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