(撮影:武田明彦)
ソルテの進化恐るべし
6歳にして、ついにダートグレードのタイトルを手にしたソルテは、2段階に強くなった。
2年前の4歳時は8戦してオープン特別の1勝のみ。2着が5回あってそのうちの4つが重賞だった。この時期は最後の詰めが甘く、なんとも歯がゆいレースが続いて、2着5回のうち4回が勝ち馬とコンマ3秒差以内というわずかの差だった。
それが吹っ切れたかのようにマイルを中心に連戦連勝となったのが昨年5歳時。この年は2戦目のフジノウェーブ記念での惨敗があっただけで、8戦7勝。最後の詰めが甘かった馬が一変、直線で一瞬にして後続を突き放すパワーを身につけた。この年の7勝のうち、じつに6戦で2着馬をコンマ5秒以上ちぎったという圧倒ぶりだ。これが強くなった第1段階。
ただソルテは3歳時のジャパンダートダービー(6着)以降、一貫して南関東同士、もしくは南関東の地方だけの全国交流レースを使い続けた。地方馬同士のレースばかりをしていると、いくら強いとはいってもそのレベルの中の範囲でしか強くならないのが普通だ。それゆえ3年ぶりのダートグレード、しかもいきなりのJpnI挑戦となったかしわ記念の予想では、今となっては恥ずかしいことに無印にしてしまった。
しかしソルテは地元同士のレースの中でも、昨年後半からはダートグレードのレベルを想定してのレースをするようになっていた。それまでは2、3番手から直線抜け出すというレースをしていたのが、11月のマイルグランプリ、そして12月のゴールドカップでは積極的にハナをとりにいって自分のペースに持ち込み、ともに38秒3で上って後続を突き放している。どちらも2番手の馬に突かれる場面があったので、決して楽なレースではなかったはず。そして前年大敗していた1400mのフジノウェーブ記念では、1000m以下で実績を残している速い馬がいたため3番手からとなったが、それでも3〜4コーナー中間で楽な手ごたえのまま先頭に立つと、最後は37秒8で上って後続を完封した。これがソルテが強くなった第2段階。
その結果、かしわ記念で逃げて2着と好走し、そして今回のさきたま杯の勝利へとつながった。その2戦とも、相手となった中央勢は全馬がGI/JpnI勝ち馬というメンバーだから、ソルテの進化たるや恐るべしというほかない。
今回のさきたま杯は、コーリンベリーとのハナ争いがまず焦点となった。ソルテが抜群のスタートを切ったのに対し、コーリンベリーは出遅れというほどではないにしても、ゲートが開いた瞬間に馬体が沈むような格好になった。それでも二の脚の速さでソルテに並びかけるところまでいったが、そこはすでに1コーナーの入口で、そうなると外枠のコーリンベリーは引くしかない。決してコーリンベリーのスタートダッシュが遅かったわけではなく、むしろソルテのスタートの良さとその後のダッシュ力を評価すべきだろう。それを身につけたことでもソルテは強くなった。
一方のコーリンベリーは、やはりベストは1200mで、3コーナー過ぎで手ごたえが一杯になってしまった。入れ替わるように抜群の手ごたえで進出してきたのがベストウォーリア。しかしソルテは直線を向くまで手ごたえに余裕があり、直線では差を広げてのゴールとなった。ベストウォーリアも力を出し切ったレースだった。
そして3着に入ったのが、中央4頭の中では圧倒的に人気がなかった(単勝46.5倍)ドリームバレンチノ。たしかに斤量を背負わされて勝ち星から遠ざかっているとはいえ、昨年の東京盃では、勝ったダノンレジェンドより2kg重い58kgを背負ってメンバー中唯一の上り35秒台の脚を使っての2着があり、さらに年末の兵庫ゴールドトロフィーでは59.5kgを背負って直線一旦は先頭に立つ見せ場をつくっての2着。それを考えれば、58kgの今回も好走してなんら不思議はない。
今回ソルテは、コーリンベリーが11番枠だったのに対して絶好の4番枠に入ったこと、また中央4頭がいずれも別定2kg増を背負っていたのに対してソルテは別定増量なしと、恵まれた面があったのは確か。とはいえ地方の舞台ならすでにGI/JpnI級の力があることも間違いなく、今年の最大目標とするJBCスプリント(川崎1400m)を、無事に、万全の態勢で迎えてほしい。なにしろ地方馬の3歳以上のGI/JpnI勝ちは、2011年かしわ記念のフリオーソを最後に、もう5年も遠ざかったままだ。