◆ロジチャリス「馬がすっかり自信を持ってきた」
何もかもがうまくいったGI制覇だった。むろんロゴタイプが制した先週の安田記念である。平面的に記せば、8番人気(単オッズ36.9倍)の伏兵馬の逃げ切り勝ち。しかし、これを単なる展開利で片付けることは当方にはできない。発馬で1馬身前にいたディサイファのハナを叩いた鞍上・田辺の度胸、同馬を担当する佐々木悟助手の諦めない心が、大輪の原動力となったのだ。
「できればもうひとつ重賞を勝ってひと花咲かせてあげたい。でも、厳しいかもしれません」
かつて佐々木助手から、こう打ち明けられたことがある。分岐点となったのは2013年の札幌記念。降り続く雨で泥田のような極悪馬場(発表は重)。優勝馬トウケイヘイローはその後国内では惨敗続き、4着アイムユアーズはこれを最後に引退…。受けたダメージは5着ロゴタイプとて浅くなかった。実際、その後は腰、トモ不安との闘い。一時は走るフォームさえ完全に崩れた。しかし傷ついていたのは馬だけではない。
「誘っていただいて悪いんですが、実はいまメシも食えないんです」
心の闇やストレスを抱えたのは、胃けいれんの症状を訴えた担当者(佐々木)サトルも同じだった。それでも逃げ出すことはしない。前を向き、戦いの場に立ち続ける似たもの同士の馬と人。紆余曲折を経たこのコンビ、3年2か月を要した復活劇を、どうして「展開利」で済ませることができようか。
ちなみに週明けの美浦でロゴタイプを見かけると、股間から実に立派なモノが…。「馬っ気なんて普段出さない馬ですけど、何に反応しているんでしょうね」と担当者は首をひねったが、答えは簡単。これぞ大仕事を成し遂げた“男の自信”の表れだぞ、サトル君!
さて“男の自信”をなかなか取り戻せない当方も、今週のGIIIエプソムCで“小”仕事くらいしておきたいもの。狙いの一頭は「馬がすっかり自信を持ってきた」(国枝調教師)ロジチャリスだ。
「以前はモコモコした体でこちらがカイバを調整したけど、筋肉がつき代謝が良くなった今はガンガン食べても大丈夫。何より、食べた後はヤンチャばかりした馬が、今はドッシリ落ち着いて淡々としている。それが前走結果(メイS1着)につながったのでしょう」と心身の成長を口にしたのは佐藤勝美助手。驚くほど強かったメイSの再現ができれば…一気の重賞突破、ならびに当方の“自信復活”も見えてくる。(美浦の宴会野郎・山村隆司)