偉大な先輩ハープの蹄跡を追えるか ディーパワンサ/吉田竜作マル秘週報
◆松下調教師も「レースに行っても力を出してくれそうです」
年齢を重ねると時の流れを早く感じるようになる。一説には、年齢を分母として考えると、普遍的に変わらないはずの“1年”という単位も年々小さくなってしまうからだとか。退職して悠々自適、のんびりと碁石を置いて暮らす我が父は、どのように時の流れを感じているのか。
先週までの3回阪神開催の新馬戦は「あっという間」に終わった感じがする。これも記者が40代半ばを迎えようかという年になったからなのか。いや、メンバーがやや小粒だったことも影響しているような…。セレクトセールの売り上げにも直結するといわれる大事な開催なのだが、(3回阪神では)新種牡馬の新馬勝ちはなく、評判馬の凡走も目立った。見どころに乏しかったから「あっという間」に感じたのだとすれば、それはそれで記者の感性が鈍ってきたことにもなるのだが…。
新たに開幕する3回中京開催は前阪神開催前とは明らかに“ワクワク感”が違う。ドーパミンが枯渇しかけているオッサンでもそう感じるのだから夏の2歳Sの主役どころか、クラシックをにぎわす逸材が出てもおかしくないことが伝わろうか。
なかでも開幕週の芝1400メートル(牝)(7月3日)に出走予定のディーパワンサ(父ディープブリランテ、母ポロンナルワ・松下)は要チェックだ。今をときめくシンハリーズの一族だが、個人的にはシンハライトがオークスを制する前から注目していた。というのも「ザッツPOG」などで推奨する“最後の1頭”を何にするか悩んでいたころ、耳にしたのがクラブ関係者A氏の「早いうちから牧場での評判が良くて、時間がたってもそれが変わらないんですよ。ハープスターみたいに夏の中京からスタートさせたい」という証言だった。
そのクラブ関係者A氏は、先週の追い切りに騎乗した川田が「めっちゃ褒めてくれました」と上気した表情で追加報告。
一方で管理する松下調教師も「ムチを入れたことがなかったので、騎手に乗ってもらって追うアクションというか、ステッキを入れる経験をさせました。経験馬相手でしたがアッサリ抜けてきましたし、その後もテンションが上がっていない。これならレースに行っても力を出してくれそうです」とあり余る手応えを口にしていた。
キャロットクラブの偉大な先輩ハープスターの蹄跡を追うことができるか。ディーパワンサのデビュー戦は大いに注目してほしい。
左回りで直線の長い中京開催というのは、栗東の各陣営にとってみれば“プレ新潟2歳S”であると同時に、“プレダービー(オークス)”でもあるのだろう。そうした背景もあり、藤岡調教師も“イチオシ”のエジステンツァ(牡=父キングカメハメハ、母リトルアマポーラ)を3週目の芝1600メートル(16日)でデビューさせる予定だ。
「まだそこまで(調教を)やっていないのもあるけど、何というかな。“オッ”て感じの手応えが今のところないんだよね。もちろん、すべてにおいて平均以上ではあるんだけど…」と当のトレーナーがやや不満顔の一方で、仲田助手は「ゲート試験合格後に調教を積んで、良くならなければ放牧に出す計画もあったのですが、そこから時計も詰めてきたし、確実に良くなってますよ。まだまだこれから良くなりそうだし、心配はいらないと思います」
期待が大きいほど時に現実との乖離を生むこともある。藤岡調教師はこの馬にそれだけ“かけている”のだろう。あと3週間でエジステンツァがどれだけ変わってくるかにも注目したい。