落馬しても「ラッキー」と言える伴啓太騎手のメンタル/トレセン発秘話
◆彼と力強い握手を交わせるだろうか
先週ナイターで当方が肉離れを発症したのが、災いの連鎖を招いたか。先週末はわが野球チーム「ライターズ」のナインが、次々災難に見舞われる悪夢が続いた。
まず金曜(8日)の調教中に“美浦のイチロー”こと野中悠太郎が落馬負傷。頭部打撲のため、土日計11鞍の騎乗をすべて取りやめた。しかし災いはこれで止まらない。翌9日の福島ではチームの核弾頭たる伴啓太が落馬。その騎乗馬は野中負傷でバトンを受けたベストサポーターだったのだから、“負の連鎖”、恐るべし。しかし災いのもとたる当方が見舞い電話を(伴)ケイタにすると、アッケラカンとした声が響いてきた。
「落馬した時はダメージを逃がすよう転がるしかない。派手な落ち方でしたが大丈夫です。実際、馬の脚が見えた瞬間は“ヤベエ”と思いましたけどね(笑い)。幸い踏まれず軽く蹴られただけ。立ち上がってみると意外にどこも痛くないし、普段の筋トレが生きましたよ。内心これラッキーだぞと(笑い)」
伴が内に進路を取ろうとした瞬間に前の馬が外に膨れての接触だから、落馬の原因としてはかなり不運。だが、これをラッキーと呼ぶあたり、野球引退を考える当方とはメンタルの構造が騎手は違うのだろう。
「いや、精神的影響がゼロと言えばウソです。その後は周囲を慎重に見るようになりますもん。でも気をつけても落ちる時は落ちる。今回のような激しいのは2年ぶりでしたが、深く考えるタイプじゃないし、首は少し痛むけど今週も“いったれ”です(笑い)」
当方も競馬における悲惨な事故は何度か過去に目撃した。それを思えば、確かに今回はラッキーな部類である。ただ馬に乗る作業は常に危険と背中合わせ。恐怖を振り払う気持ちと結果(1着)が重なった時…差し出す右手に力がこもるのには相応の理由がある。
「今週の福島は高柳キュウ舎のシンメトリックという馬がちょっと楽しみなんです。半年ぶりの出走ですが、新馬で6着したようにけっこう走りますから注目してください」
肉離れにヘコむ当方とは対照的に、落馬にメゲないけなげな若武者。その彼と力強い握手を交わせるだろうか。今週末は宴会野郎に勇気を与えるケイタの手綱さばきに注目している。(美浦の宴会野郎・山村隆司)