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女王復活!ママになった宮下瞳騎手

  • 2016年07月19日(火) 18時00分
宮下瞳さん1

7月13日に騎手免許試験合格が発表された宮下瞳さん 提供:名古屋競馬



息子たちの前で勝つことができたら

 日本の女性騎手最多勝利記録626勝を挙げ、2011年に現役を引退した宮下瞳さん。その後2人の息子を出産して育児に専念していましたが、7月13日に騎手免許試験合格が発表されました。再び騎手を目指すきっかけは何だったのか、そしてこれからの目標をお聞きしました。

赤見:まずは騎手免許試験合格おめでとうございます!

宮下:ありがとうございます。たくさんの方々にサポートしていただいたので、ひとまずホッとしました。ここからがスタートですけど、まずは試験に合格しないことには始まらないですからね。

赤見:2011年の引退時にはいろいろなことをやり切って、すごい記録も作っての引退でしたが、なぜもう一度復帰しようと考えたんですか?

宮下:引退の時には、本当にやり切った気持ちが大きかったです。わたしは周りの方にも恵まれましたし、旦那さん(同じ名古屋所属の小山信行騎手)もすごくサポートしてくれて。韓国にも行かせてもらいましたし、幸せな16年の騎手生活でした。引退と同時に長男を妊娠していたので、しばらくは出産・育児に集中していました。目の前が厩舎だったんですけど馬と接する機会はほとんどなかったです。2年後に次男も生まれて、さらに忙しくなって。子育てもとても充実していました。

そんな生活の中で、長男がわたしの騎手時代の写真を見て、「これ誰?」って聞いて来たんです。「ママだよ。ママもパパみたいに、昔馬に乗っていたんだよ」っていう話をしたら、「ママが乗っているところを見たい!応援するよ」って言ってくれて。そこからですね、復帰を真剣に考えるようになったのは。

赤見:復帰したいと周りに話した時は、どんな反応でしたか?

宮下:まず旦那さんに話したんですけど、反対されるだろうなと思ったら、「いいんじゃない。応援するよ」って言ってくれて。でも復帰するためには、早朝から厩務員の仕事をしないといけないし、旦那さんはもちろん攻め馬があるしで、子供たちを見てくれる人が必要だったんです。鹿児島の実家の父に相談したら、最初はビックリしていたんですけど、すぐに「分かった」って言ってくれて、今は一緒に暮らしているんです。旦那さんと父の助けがなかったら実現していないので、本当に感謝しています。

瞳さんと小山信行騎手

引退式での宮下瞳さんと小山信行騎手 提供:名古屋競馬



赤見:もともと所属していた竹口勝利厩舎から再デビューということで、先生も喜んだんじゃないですか?

宮下:先生は72歳という年齢もあって、「そろそろ引退かな」って言っていたんです。でもわたしが復帰したいと相談したら、「瞳が復帰するならまだまだ頑張らないとな」って言ってくれて。他にも調騎会会長や角田先生、たくさんの方にサポートしていただいたからこそ復帰することができるので、本当に有難いですね。

赤見:復帰に向けて、どんな経緯で過ごしたんですか?

宮下:まず周りに相談して、昨年の11月に厩務員登録をしました。そこから朝の調教に乗り始めたんですけど、ブランクが5年あったのでものすごく筋肉痛になりましたね(笑)。でもやっぱり、久しぶりに乗った馬の背中は最高でした。それに、今までは騎手として乗る側から競馬に携わって来ましたが、厩務員として馬の世話をしながら競馬に向かうということを経験して、すごく視野が広がりました。

宮下瞳さん2

久しぶりに乗った馬の背中は最高でした



赤見:一番大変な事は何でしたか?

宮下:学科試験の勉強です(苦笑)。だいぶ忘れていたのでめちゃくちゃ勉強しました。今までで一番勉強したんじゃないかな。あと、実技試験に飛び乗りと乗馬があるので練習したんですけど、飛び乗りがなかなかできなかったし、障害飛越で何回も落馬したりして恥ずかしかったです。

赤見:8月1日付けで免許交付ということで、いよいよ再スタートですね。

宮下:昨日合格発表があったので、今朝も周りの方々から「おめでとう」って言ってもらったんですけど、正直まだ実感がないんです。今は、本当にレースに乗れるのかな?とか、周りに迷惑かけないようにしなくちゃという気持ちが大きいですね。たくさんの方々にサポートしていただきましたし、期待して待っていてくれるファンの方もいるので、その気持ちに恥じないようがんばります。

赤見:名古屋では木之前葵騎手ががんばっているし、JRAの藤田菜七子騎手も大注目されていますよね。

宮下:2人とも本当にがんばっているし、若くて可愛いですよね。そういう子たちががんばる姿はとても刺激になります。わたしはおばちゃんパワーでがんばりますよ!

赤見:瞳さんはおばちゃんじゃないです!てか、わたしも同級生ですから(笑)。

宮下:そうでしたね(笑)。先日、高知の別府真衣騎手が600勝を達成したじゃないですか。これは本当に大きかったですね。わたしの作った記録を抜くのは真衣ちゃんだなと思っていましたけど、実際に近づくと「抜かれたくない」という気持ちです。もう一度復帰するからには、負けたくないし負けられないですね。

赤見:別府騎手との女性騎手最多勝争い、本当に楽しみです!!では、今後の目標を教えて下さい。

宮下:今はスタートラインに立てたところなので、大きなことは言えないですが、たくさんの方々に応援していただいた分、恩返しできるようにがんばります。それに、息子たちの前で勝つことができたら嬉しいです!

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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