“裏函”で見つけた当たりくじ「平成の華麗なる一族」レッドオルガ/トレセン発秘話
◆桜花賞を意識する逸材と言ってもいいかもしれない
【トレセン発秘話】暑い盛りは北海道というのが、長らく定着する当方の夏の過ごし方。むろん避暑を求めた個人旅行ではない。GII札幌記念を筆頭とする重賞テンコ盛りの札幌開催において、より価値ある情報を読者に提供せんがための涙、涙(?)の単身出張である。
それがウソでない証拠に、ススキノには目もくれず例年“裏函”を担当。ウッドチップの調教コースがある函館はサラブレッドにとって優しい競馬場。故に札幌よりおのずと好素材が集まる“北のトレセン”であり、当方も花より実を選択してきたつもりだった。ところが…。
「今週競馬を使う予定の入厩馬はいないです」
意気込んだ函館初日に耳にしたのはこんな言葉ばかり。完全な肩透かし状態である。
冷静に考えれば近年は開催ごとに人が入れ替わる厩舎が多く、現在の入厩馬も函館最終週の先週に半ば強引に出走した馬ばかり。“裏函”が馬券でおいしかったのはいまや昔。せわしない6日間開催では、札幌開幕を狙っての函館入厩馬などまずいないのが実情となっているのだ。それでも根気よく取材を重ねていると…思わぬ“当たりくじ”を発見した。
「今週どころか北海道で使う予定はないけどね。この馬は覚えておいたほうがいいんじゃない?」
藤原英厩舎の田中博司助手がこうささやくダイヤの原石、それが今年の桜花賞で4番人気と注目を集めたレッドアヴァンセの全妹、レッドオルガ(父ディープインパクト、母エリモピクシー)。捨てる神あれば拾う神ありかもしれない。
「いい馬だよ。まさにディープって感じ。さすが兄弟すべてが上まで行く良血だけのことはある」
この言葉通り、リディルから始まりクラレント→レッドアリオン→サトノルパンと第1子から第4子までがすべて重賞勝ち馬という平成版“華麗なる一族”なのだ。
「まだトモに力がついていないから、函館ではゲート試験だけ受けて再び放牧に出す予定。ただ、現時点でも走りのバランスは格段にいいからね。これで馬がしっかりしてきたら、相当良くなる予感がする。デビューは秋以降だけど、忘れずにいればいいことがあるよ」
同助手の感触から測れば初陣Vは鉄板級。いや、すでに桜花賞を意識する逸材と言ってもいいかもしれない。札幌開幕競馬こそ分が悪そうな函館組だが…長い目で見ればやっぱり“おいしい裏函”であることを予感させるスタートである。(美浦の宴会野郎・山村隆司)