2200メートルの始動に“半端感”は拭えなかったがプロディガルサンの印象を変えた国枝師の弁/トレセン発秘話
◆「成長した姿を見せてくれてもいい」
先週金曜(9日)午後に美浦でキュウ舎回りをしていると、出張キュウ舎となっている「北I-12」棟から思わぬ、しかし見慣れた顔がひょっこり現れた。
「いま着きました。こっちは予想通り暑いけど、ボクの夏もまだまだ終わりませんねぇ」
あいさつを交わしたのは、今夏の“裏函”出張で毎週取材を受けてくれた栗東・森キュウ舎の日高大嗣助手。セントライト記念出走=ケンホファヴァルトの美浦入キュウに合わせて札幌から移動。彼も夏競馬の延長戦に突入したわけだ。
「まさか2勝馬が除外ってことはないですよね」
先週はこんな不安も口にした日高助手だが、フタを開ければ登録はフルゲート(18頭)に満たない14頭。ダービー馬マカヒキは凱旋門賞へ、同11着ロードクエストはマイル路線へ。全体レベルが高すぎるゆえに、すみ分けがハッキリした世代なのかもしれない。
さて、そんなクラシック路線継続組でも今週の主役はむろん皐月賞馬ディーマジェスティ。当方同様に夏を裏函で過ごし美浦に戻ってきた一頭だが、函館入キュウ時からメリハリある馬体が目立ち「ダービー前よりずっといいじゃないか」と山口記者と言葉を交わしてきた存在だ。それでも…。“秋競馬”に視点を移せば注目すべきは他にもいる。春当時に「完成度でまだ六分」と国枝栄調教師が語ったプロディガルサン。一度は先頭に立ち見せ場をつくったダービー(10着)のレース直後、「最後は距離ですかねぇ」と椎本英男助手は唇をかんだ。その言葉が引っ掛かり、当初は2200メートルからの始動に“半端感”を拭えなかったのだが…。印象を変えたのは指揮官=国枝調教師の次なる弁だ。
「レース当日に異常発汗するなど、春は若さを拭えなかった。勝ち切れないのは、そんなレース前の消耗もあったと思うんだ。夏を越して体はそう変わっていないが、精神的には随分とどっしりしてきた。もともと晩成と見ていた馬だし、この気配を保って競馬に挑めれば成長した姿を見せてくれてもいい」
同馬に足りなかったのがフィジカルではなくメンタルのスタミナだったとすれば…。菊花賞2着馬リアルスティールの全弟として、スケールアップした走りを始動戦から見せてくれるのではなかろうか。 (美浦の宴会野郎・山村隆司)