◆10年連続で連対馬を輩出する毎日王冠上位組を評価
先週土曜(22日)の東京メイン、GIII富士Sのレース後である。検量室へ取材に降りると、優勝馬ヤングマンパワーを担当する森信次郎キュウ務員が、当方を見つけるや底抜けの笑顔で語りかけてきた。
「いや〜びっくりした。いつしか本格化していたんだな」
“びっくりした”のは当然ながら理由がある。まずは相手関係。前走Vの関屋記念とは一転し、今回はGI馬2頭を筆頭とする重厚な組み合わせ。そして何より体調面に関して半信半疑で送り出した経緯があった。戦前に彼はこう語っていた。
「この馬のいい時は銭形の斑点が見える。でも全身に出ていた前走と違って、今回に関しては首から肩にかけてまで。ひょっとして夏馬なのかもしれないし、これで勝つようなら本当に力をつけたと言えるんだけどなぁ」
しかし、結果はご存じの通り。森キュウ務員は担当馬のジャッジに関して非常に的確で、取材しがいのある人物として当方が重宝(?)している関係者の一人。その微妙な口ぶりに印は▲評価にとどめてしまったが、今回は「最近は馬がすっかり自信を持っている」という手塚貴久調教師の評価が的確だったということだろう。競走馬を取材する上で、やはり重要なのはサラブレッドの“旬”の見極め。当方にとっても大いに反省すべき結果と受け止めている。
さて、先週のレースを今更ながら振り返ったのは、今週の天皇賞も最近は同様の傾向が見えるからだ。札幌記念Vの勢いを保ち制覇した11年トーセンジョーダン(7番人気)。オール2着ながらも戦前3走で連続して最速上がりをマークしていた13年ジャスタウェイ。同年に1000万からオープンまで3連勝していた14年スピルバーグ…。彼らは皆、この天皇賞・秋がGI初戴冠。夏から秋がサラブレッドが最も変わるシーズンであることの証明でもあろう。
その意味で今年怖いのは、毎日王冠で1、2着を分けた4歳馬2頭の成長度か。10年連続で連対馬を輩出する毎日王冠は、天皇賞と最も連動するレース。ともに、さらに距離が延びていいタイプではなく、ここはメイチの仕上げで来るはずだ。(美浦の宴会野郎・山村隆司)