ホープフルS 中舘師イチ押しのニシノアップルパイでひと足早い“祭り”だ/トレセン発秘話
◆「一発ないか」と意欲を見せていたのがこの馬
2016年の中央競馬も、いよいよ今週で見納め。キタサンブラックの結果を問わず、有馬記念が最大の“祭り”であることは今も昔も変わりない。とはいえ、である。今週は金土日の異例の3日間開催。グランプリ以外に70レースも楽しめる。お祭り気分でラストを迎えるには“道中の運び”が大事になるが…。
「想定が取れない」
全休明けの20日、美浦では各社トラックマンが渋い顔で互いに連絡を取り合っていた。通常は木曜の出馬投票が、今週は水曜に行われるため、取材が1日前倒し。もっとも、厩舎業務も同様に前倒しとはならないのが頭の痛いところである。火曜は調教師不在の厩舎も多く、不満足な取材の道中、いら立ちを皆が隠せずにいた。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。そんな状況下で通常の水曜以上に取材に協力的だったのが中舘英二調教師だ。後光が差して見えたのは、蛍光オレンジの厩舎カラーの影響だけではなかろう。
「オレに用?」
得意のフレーズに当方が大きくうなずき、近づいたのには訳がある。日曜(25日)中山GIIホープフルSに出走するニシノアップルパイ。競馬週刊誌では印ス抜けの伏兵だが、吉沢七留助手が1週前から「一発ないか」と意欲を見せていたのがこの馬だ。果たして指揮官の感触は?
「前回がいい競馬だったから重賞に行こうと思ったんだ。多少の勝算はありますよ」
葉牡丹賞は勝ち馬から1秒差の8着。数字だけ見れば重賞ではいかにも敷居が高いが、それを“いい競馬”と見るのにも当然ながら訳がある。
「デビュー戦は勝ったにせよ、折り合いがつかず天井を向いた走り。フラフラしてラチにぶつかりそうになるし、ムチャクチャだったよね。それが前走はスムーズに折り合い、直線で挟まれてブレーキをかけてからも、しぶとく盛り返した。すごい成長。しかも脚部不安明けの前回は、坂路でおっかなびっくりの調整だったから。トラックで乗れた今回の上積みは相当だし、息は全然違うはず」
元ジョッキーの指揮官が重賞をチョイスしたのも、やはり“道中の運び”の重要性を知ればこそ。◎ハートレーがホープフルSを制した昨年は左うちわのグランプリ観戦だったが、大穴の担当馬が勝つようなら…。それこそ有馬を前に“わが祭り”が完結する。(美浦の宴会野郎・山村隆司)