先週の賞金除外転じて福となす プロディガル飛躍の時/トレセン発秘話
◆「芯が入ってだいぶしっかりした印象」
最初はちょっとした違和感だった。体感温度が異様に低い。はて、予報では3月並みの陽気のはずだが…。もう一度、天気を確認したが間違いない。もしやと思ったが、肌寒さは悪寒へ変わり、当然のように熱発…。前夜の熱燗の量が少々足りなかったかもしれないが、風邪をひくなど自己管理ができていない証拠。今冬はトレセンでも大流行だが、夏派の当方にとっても最悪のシーズンの真っただ中である。
さて、今週のGIII東京新聞杯にエントリーするヤングマンパワーも、実は当方と同じにおいがするタイプ。16着に惨敗した前走のマイルCSを「位置を取って競馬をしてほしい、という意図がどうも鞍上(バルザローナ)に伝わっていなかった」と管理する手塚貴久調教師は分析する。だが、敗因はそれだけだろうか?
「体に銭形が浮かんで今が絶好」と担当の森信次郎キュウ務員がニンマリしていたのが、昨年3連勝の皮切りとなった多摩川Sの前後。今回の気配を同キュウ務員に尋ねると「悪くはないんだけど、夏ごろと比べるとねぇ…」。
返ってきたのは微妙な違和感。3歳時も関屋記念→京成杯AHの連続3着が成績のピークだったことを思えば、当方ほどヤワでなくとも同馬も暑い時期ほど調子がいい。左回りのマイルはベストだし、応援はしたい担当馬だが、体調を含めて冷静にジャッジすべき意識が働く。
逆に今、絶好調なのは以前に当欄でも記した“冬派”のマイネルアウラートだが、今回は別に注目する馬がもう一頭いる。先週の東京・白富士Sを賞金除外となり急きょスライド出走となったプロディガルサンだ。
「2歳新馬戦以来のマイル? いや、意外に面白いかもしれない」と佐藤勝美助手がつぶやいたように、ダービー(10着)で負けた当初から一部で「距離限界説」がささやかれた。全兄リアルスティールの勝ち鞍(3勝)はすべて9ハロン戦であり除外が災い転じて、となる可能性を秘めている。
「菊花賞後に熱発するなど当時はまだ弱さもあったが、今では芯が入ってだいぶしっかりした印象。ハミにモタれることなく、走り自体も随分と良くなってきた」と語るのは椎本英男助手。同じ“熱発仲間”でも体力低下を日々感じる当方と違って、こちらはこれからが飛躍すべき時。少なくとも今回のマイル選択に何ら違和感は感じない。(美浦の宴会野郎・山村隆司)