日程上、やや古い話になってしまったが、12月29日大井「東京大賞典」のこと。早朝から大粒の雪が舞い降り、気温3℃。凍えるような北風の中、アジュディミツオーが完璧に逃げ切った。1〜2コーナー、アジュディミツオー、ユートピア、クーリンガーと並びが決まり、結局それが最後まで崩れない。典型的な行った行った。当日一緒に観戦した知人は、パーソナルラッシュ=タイムパラドックスを買っていたらしく、帰り道、あまり話が弾まなかった。「盛り上がりがなかったよね…」。ただし、勝ち馬は2000m2分02秒6、JBCクラシックとまったく同じ時計で走り(大賞典レコード)、1000m通過61秒2、流れもけっして緩くない。確かな実力。ミツオーの勝因はまずそれが大きなベースで、そこに天候と馬場、いくつか運が味方した。ともあれ、南関東馬の大賞典優勝は、平成10年アブクマポーロ以来、6年ぶりの快挙である。
東京大賞典(サラ3歳以上 定量 交流G1 2000m重)
◎(1)アジュディミツオー (55・内田博) 2分02秒6
△(2)ユートピア (57・横山典) 3
(3)クーリンガー (57・和田竜) 1.1/2
△(4)タイムパラドックス (57・武豊) 頭
(5)トーシンブリザード (57・今野) 3/4
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(6)モエレトレジャー (55・金子)
▲(9)パーソナルラッシュ (55・安藤勝)
△(11)シャコーオープン (57・的場文)
○(12)カフェオリンポス (55・岡部)
単360円 馬複1960円 馬単3160円
3連複13320円 3連単55060円
アジュディミツオーには04年、何度となく驚かされた。キャリア4戦目の東京ダービー制覇が史上初なら、王者アドマイヤドンと接戦のJBCも、時計を含め型破り。だから大賞典はサプライズ、そのダメ押しということになるのだろう。並み外れた身体能力と精神力。当初のイメージは少し掛かり気味の先行馬。ああ、やはりスピード血統…と思わせながら、その実一戦ごとにレースぶりに幅を増した。敗戦を次に生かす学習能力にも秀でている。1月7日、ドバイワールドC(3月26日)挑戦が正式に表明された。順調なら川崎記念を使って渡航。個人的にはまず「フェブラリーS」で全国レベルをアピールしてほしかったが、ミツオーの旬がまさに今という判断なら、むろんそれはそれで納得がいく。
ユートピア、クーリンガーの健闘は、ひとまず馬場と展開に合わせた好騎乗。それでもこの2頭、ともに交流経験豊富で、とりわけユートピアは2〜3歳時と比べ、打たれ強さ、逞しさが違ってきた。もはや芝ダート両用、距離オールマイティー。似たタイプのアグネスデジタルの域に、今後どこまで迫れるか。武豊・タイムパラドックスは道中4〜5番手、ソツなく乗ったとみえたが、直線手応えほど伸びなかった。JBCクラシックとほぼ同じレースぶり。大井の砂、その適性うんぬんもあるのだろう。馬場と展開がカギを握る、そういう評価か。JCダート勝ち馬だから、ひとまず実績は国際レベル。しかし人間の決めた“格”“グレード”など、元より馬自身が関知することでもない。
同じく国際レベルといえばパーソナルラッシュ。スタートの一完歩目で大きくモタれ、離れた殿り。その時点で5馬身以上の不利があり、結局最後まで見せ場がなかった。「アクシデントがすべて。本当は凄い馬なんですよ」。遠征直後、検疫明け。しかし安藤勝己J、そのことにはいっさい触れず帰り支度を急いだという。おそらくと思う。実際追い上げるチャンスはあり、馬自身の手応えも悪くなかった。しかしあえて…という鞍上の判断。ひとまず次走を期待する。パドックの同馬は落ち着いたいい気配。例えばアドマイヤドンと比べても、柔らかでのびやかな馬体など、むしろ一ランク上の王者の雰囲気を持っている。休み明け2戦目、少し気負った走りにみえたカフェオリンポス、金子騎手らしく待機策で脚を確かめたモエレトレジャー。トーシンブリザードの健闘もうれしいが、これは渋った馬場と好枠がたぶん大きい。シャコーオープンは改めて鍛え直すことになる。
ニューイヤーC(1月12日 浦和 サラ3歳 別定1800m)
◎ナイトスクール (54・内田博)
○ダイヤサンディ (54・的場文)
▲ジルハー (54・今野)
△ビービープライド (54・左海)
△デヴァイドスカイ (54・桑島)
△モエレマジックオー (54・秋元)
△カネショウハヤブサ (54・野崎)
テラノリファード (54・酒井)
前口上めいた話になるが、1月2日、船橋で明け3歳「ブルーバードC」が行なわれた。結果は、優勝タイムライアン(父サニーブライアン)、2着マズルブラスト(父ホワイトマズル)、3着エアムートン(父エアジハード)。正直、今週ニューイヤーCより一枚半ほどレベルの点で上回る。四角3番手から差し切ったタイムライアンは相当の道営キャリアを持ち、完成度が高いイメージ。対してマズルブラストはデビュー2連勝後の3走目、4コーナー果敢に先頭を奪ったレースぶりはいかにも素質馬。いずれにせよ、川島正行厩舎ワンツー。今年はどうやら“四天王”が確立した。2歳優駿2着シーチャリオット(父シーキングザゴールド)はもちろん、前述タイムライアン、マズルブラストに加え、デビュー2連勝ブックオブケルズ(父シングスピール)。それぞれが個性にあふれ、何とも豪華なラインアップ。内田博騎手、石崎隆騎手、お手馬が重複するだけに、このうち1〜2頭はJRA挑戦という可能性も大きい。
ナイトスクールは、そのシーチャリオット、マズルブラスト、ブックオブケルズと並ぶダーレー・ジャパン第2期生。昨年の出世頭は今のところゼレンカ(東京湾C・2着)だが、2期生はまるでレベルが違っている。ナイトスクールは昨秋デビュー戦圧勝。以後2戦ゲート難で足踏みしたが、前走船橋1600m2着、タイムライアンと好勝負を演じた。父マキャベリアン。クラシック候補というより快速マイラーのイメージだが、それだけにダーレー陣営、手駒を使い分けてきた気配が濃い。一枚落ちのここならスピード上位。コンビ2度目の鞍上がソツなく捌いて勝機をつかむ。
2歳優駿5着ダイヤサンディ、ハイセイコー記念4着ジルハーが重賞実績でリードするが、この2頭、いずれもズブい追い込み馬で、浦和初コースは少々気になる。器用さと完成度でビービープライド、前走の内容がよかったデヴァイドスカイ。転入後浦和2戦2勝モエレマジックオーまで圏内か。