昨秋のスプリンターズS覇者レッドファルクス 仕上がり度だけが焦点/トレセン発秘話
◆ぶっつけGI出走の理由をネガティブに捉えるのは危険
時に関係者は意図せず取材者を惑わせる発言をすることがある。例えば先週19日の中山オープン・千葉Sに出走したアトランタ。同じダート6ハロンの自己条件、阪神・なにわS(1600万下)とのダブル登録だったが、あえて格上挑戦を選択した理由を「3週後の中山に自己条件の適鞍がある。ここを使って中2週で向かうなら、輸送競馬ではなく、同じ舞台を使ったほうが馬も楽だから」と古賀史生調教師は語った。
当方はこの発言に勝負度合いが薄い(次走が勝負?)気がして本命を見送ったが、結果は2着好走。冷静に考えれば、ダブル登録の時点で勝算を探っていたわけであり、次走うんぬんは後づけだったと遅まきながら気づいた次第だ。
さて、今週のGI高松宮記念にも、かつて当方を惑わせた馬が出走してくる。昨秋の王者レッドファルクスだ。
「休み明けでも舞台が中京なら“楽しみ”と言える状態ですけどね。今回は初コースの中山(芝6ハロン)がどうか。ともかく来春の高松宮記念に向けて、GIで手応えのあるレースをしてほしい」
これは管理する尾関知人調教師が、GI初挑戦になったスプリンターズSの戦前に放った言葉。本命を見送ったのは当方だけではない。担当記者の多くが、この発言に“買うべきは来春”と錯覚した。ご存じの通り、結果は堂々のタイトル奪取。過去に勝ち鞍のなかった右回りで“GI一発ツモ”である。レース後の指揮官は「想像の枠を超えた」と管理馬を称賛したが、長らく同馬を取材してきた当方も共感せざるを得ない偉業だった。
さて、今回はダートを含めて計4勝を挙げる得意の中京。言わずもがな陣営が、そして担当記者たちが昨秋から意識した一番だ。3か月半ぶりの出走となる同馬にとって、仕上がり度だけが焦点と言えそうだが…。
「若干(調子が)下降気味で香港スプリント(12着)を走ったことで、レース後の回復が遅かった。それにオーシャンSから始動のイメージもなかったしね」
トレーナーが語った、ぶっつけGI出走の理由をネガティブに捉えるのは危険だ。思えば初戴冠も3か月ぶりの始動戦。今となっては、ここの予行演習だった気さえしてくる。指揮官の発言に惑わされることなく、今回こそ当方も正確なジャッジを下す気構えだ。(美浦の宴会野郎・山村隆司)