公開調教の騎乗者、高田潤騎手(86番・写真手前)
事故など目だったトラブルがなく、何よりであった
去る5月23日(火)、札幌競馬場を会場に、北海道トレーニングセールが開催された。結果は既報の通り、208頭(牡111頭、牝97頭)が上場され、155頭(牡84頭、牝71頭)が落札された。総売り上げは12億8509万2000円(税込)で、1頭平均829万916円と、いずれの数字も昨年を大きく上回る結果となった。
前日の22日(月)を公開調教に充て、23日はセリだけを実施する2日間の日程が組まれており、両日とも札幌競馬場は地方中央の競馬関係者が多数来場し、ひじょうに賑わいを見せた。
まず今回は、初日の様子について書かせて頂く。
このセールは、より厳密にいえば、すでに21日(日)から始まっており、オークスの開催日ではあるが、この日は事前の下見日とされている。したがって、上場馬はその前日、土曜日に競馬場入りする。つまり、20日〜23日の「3泊4日」という日程を余儀なくされる。これはなかなか大きな負担だ。
22日(月)の公開調教は午前10時から始まった。札幌の内側ダートコースを使用して、向こう正面から基本的に2頭併走でゆっくりスタートし、4コーナーの残り2ハロン手前にさしかかったあたりから徐々に速度を上げて行く。計時はこの2ハロンを行なう。
昨年よりもやや少ないとはいえ、北海道トレーニングセールは他のトレーニングセールと比較すると圧倒的に頭数が多い。今年も、当初は名簿上で231頭+JRAブリーズアップセールを欠場した13頭中9頭がこちらに回ってきたため、240頭の上場予定であった。
これだけの数になると、公開調教は、見る方もなかなか忙しい。上場馬の飼養者(育成牧場)ごとに併走で実施されるため、必ずしも順番はセリ名簿の上場順通りとは行かず、まったくバラバラに登場する。全体を5クルーに分割し、クルー毎に21〜23組が次々にダートコースを駆け抜けて行く。1組が走り終わる度に、大型ビジョンと放送で、2ハロンそれぞれの走破タイムが発表される。安全確保のため、前の組が走り終わるまでは次の組は出発しない。
1クルーあたり概ね45分程度の所要時間を見込んでおり、次のクルーの公開調教が始まるまでの間、ハロー掛けと休憩(トイレなど)のために15分の休憩時間が確保されている。
首都圏から空路飛んでこの日の朝に札幌入りした多くの人々は、まず寒さに驚いたようであった。天候は曇りで雨の心配こそないものの、やや風があり、吹きさらしの2階スタンドで見ていると、かなり冷えてくる。動き回っていれば大丈夫だが、じっとカメラを構えているだけなので、心底寒く感じた。毎年のことながら、札幌の5月下旬は防寒対策が必要だ。
公開調教の騎乗者には、門別をはじめとするプロの現役騎手の姿が目についた。服部茂史、岩橋勇二、阿部龍、黒沢愛斗、桑村真明、石川倭などの各騎手は門別組だが、秋元耕成(浦和)や、張田昂(船橋)、宮川実(高知)などの他地区の騎手もここに駆けつけて騎乗していた。さらに荻野琢真、高田潤といった中央の騎手の名前もあったし、日高で日々育成馬に騎乗する東南アジア系外国人騎乗者の名前も散見された。バラエティに富んだメンバーが乗っていた。
公開調教の騎乗者、岩橋勇二(写真奥)、服部茂史(写真手前)の門別組騎手
公開調教の騎乗者、阿部龍騎手(写真手前)
コースの違いもあるので、他のトレーニングセールとの時計の比較はあまり意味がないかも知れないが、ここでは毎年、かなり速い走破タイムが出る。今年も、2ハロンいずれも11秒台にまとめる馬が多く、中には、終いの1ハロンを10秒台で駆け抜ける馬がいた。もちろん、騎乗者はそれぞれ体格も体重も異なるので、公開調教一覧表には騎乗者名の横に斤量も記載されている。それを加味しながら購買者は丹念に調教の各馬の動きを注視する。一杯に追われているか、馬なりで余力ありか、フォームや口向きなどチェックし、購買予定馬を絞って行くのである。
公開調教の騎乗者、宮川実騎手(29番・写真左)、張田昂騎手(230番・写真右)
公開調教の騎乗者、荻野琢真騎手(125番・写真左)
調教の一番時計は、まず2ハロン合計が、1クルー目の16組に登場した231番トーコーユズキの2015(父ハードスパン、牡)の22.08秒(11.00秒、11.08秒)。翌日のセリでもこの馬が最高価格となった。
2ハロン合計最速231番トーコーユズキの2015
また、終い1ハロンの最速は、4クルー目18組に出てきた103番アマノブラウニイー2015(父シニスターミニスター、牝)の10.68秒であった。
終い1ハロン最速103番アマノブラウニイー2015
11秒を切れるかどうかがひとつの節目とも言えるが、これはなかなか難しく、騎乗者の技術や斤量もさることながら、馬の能力、仕上がり具合にもよる。中には最初の1ハロンを捨てて、終いの1ハロンだけに集中する馬もいたが、それでも10秒台を出すことは容易ではないし、またここでの調教タイムが即実践に直結するということでもない。
こうして、午後3時近くまでかかって予定通り、全上場馬の公開調教が無事に終わった。今年は落馬(スタート場所では一時的に放馬した例があったらしいが)や、事故など目だったトラブルがなく、何よりであった。これも調教技術の向上の賜物と言えそうだ。
次回はセリ当日の様子について触れる。